2017-11-12 (Sun)

「何でだろうなぁ、いまいち納得できないのは……」

後宮の一室で、脇息に肘をつき溜息と共にもう何度言ったかしれない言葉を吐き出す。

「納得できないわぁ、本当にこれしかなかったのかしら…」

そもそもあの陰陽師が悪い。あの男がもう少しまともならあたしだってこの現実を素直に受け入れられたはずなのに。
と、自分のことは棚上げして愚痴ってしまう。

「でも変人だからこそこんな嘘をつくはずないわよねぇ…ああでも!やっぱり納得いかない!」

がたん、脇息が転がる。
立ち上り、両手に拳を作って高く、高く振り上げ天も高らかに叫んだ。



「なんであたしが女御になってるのよぉーーーーーっっ!!!」










「文~帝と姫の事情~」第三十一話・そして終幕へ










「原因がわかりました!!!」

変人陰陽師が転がるように駆けてきたのはあれから十日後のこと。

「………よい、その者は私が呼んだのだ、離してやれ」

興奮しすぎて帝に拝謁するための手順とかを全部ふっ飛ばして乱入してきたものだから
すわ暗殺か?!と警護の者達に取り押さえられて周りの女房達も悲鳴をあげていた。
それを鷹男はまたしても深い、長い溜息をついてこめかみを揉みながら解放するように言ったから、いきなり拘束を解かれ自由になったのに対応しきれなかった身体が床に激突する。べちゃりって音がした。べちゃり、って。…生きてる?

残念ながらぴんぴんしていた変人陰陽師は十日前に会った時と同様に瞳を蘭々に輝かせて
あろうことか

「主上!!見つけました!わかりました!原因が!!主上とそこの姫君の入れ……」

「その者の口をふさげ!!!」

「むぐっ…?!ふごふごふご……っっっ」

などと叫び出したものだから慌てて鷹男が命令して口をふさがれてた。あ、鼻までふさがれて息できてないよ?!ねえ、大丈夫なの、あれ?!

「……紐でも持ってきて口をふさいだら全員退がれ」

続けて命令する鷹男はもう、すごく疲れてた。

「ああ、そなたは残るように。あれの傍にいて私が命じたら紐をほどくように」

ここではただの女官だから、あたしに視線を向けてそう鷹男が言ったことで残ることができた。
もちろん、その間も変人陰陽師はずっともごもご言ってる。いい加減状況理解しなさいよ。

「………」

「………」

「ふご!ふごふごふごっ!」

「……………」

「……………」

「ふごごごごっっ」

「…………………」

「…………………ねえ…いつまでこのままなの……?」

ちなみに人払いがすんでもなかなか鷹男から解放の合図はなかった。
……気持ちはわかるけどね。うん。でも話を聞かないと先に進めないからさ。

「はぁ……不本意ですが………仕方ありませんね……」

「ふごーーーっっ!」

「こらっ!暴れないの!ほどけないでしょ!」

なんなの?まるで子供みたいなんだけど?!

そこでようやく紐をほどくと、一切の躊躇もなく間も空けず、息継ぎすら忘れて変人陰陽師は一気に話し出した。

「魂です!魂が身体から離れかかってるのが原因です!!!」

変人陰陽師の第一声に、あたしも鷹男も一瞬息を止めた。

「…詳しく最初から説明せよ。」

「死にかけてるんです!ほっておくと死んじゃうんです!」

「……ど、どっちが…?」

「姫君は以前に死にかけたことがありませんか!?それも何度か!!」

主上が死にかけたということがあればさすがのわたしも聞いているでしょうからおそらく姫君の方です!と。
変人陰陽師が叫ぶ。

「なんで……」

一度目なら誰でも知ってることだ。吉野君を助けるために馬に乗って逃げて、落馬して生死の境を彷徨った。
だけど、
だけど二回目は…

帥の宮に殺されそうになったことはごく一部の関係者しか知らないことだ。

身体が震えて、全身が冷たくなっていく。けれどその手が鷹男の温かさに包まれた。
大丈夫、と。
その温かさが安心させるように包んでくれる。

「つまり……このままでは瑠璃姫は死ぬと……………?」

固い声。
声も出せないあたしに代わって鷹男が説明の続きを求めた。

変人陰陽師ときたらそんなあたし達の様子にすら全く気付いていなかったみだいだけどね。
無神経なことを興奮しっぱなしで話してたもの。

「その通りでございます!そこで!何故!主上と入れ替わったかということですが!」

ぎゅっと
握られた手に力がこめられた。

「………続きを、」


「はい!!!それはわかりません!!!!!神のご加護としか!」


よし、殴ろう。


鷹男とあたしの心はこの時多分、ひとつになってた。





続く


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