「文~帝と姫の事情~」最終話・そして終幕
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鷹男が壊れかけてた。
ここまでの変人に会ったのは初めてなんだと思う。ちょっと、許容量超えちゃったのね。
「そうです!それはもう、神のご加護としか!主上は天照大神の末裔でございますので!生命力は只人よりもお強いはずです!」
「……あなたの方がよほど強そうよ…。」
死ぬと言われたのはあたしの方なのに、鷹男に比べれば冷静だった。
「よほどそこの姫様は生への執着がすさまじいのでしょう!生命力のある主上のお身体を乗っ取ってまで生きようとなさるとは!いや素晴らしい!!」
「失礼ね!人の身体奪ってまで生きたいとはさすがに思ってないわよ!」
あたしの抗議も変人の耳には入っていなかった。
「それでですね!生命力のある主上が、そこの姫君に生命力を注ぐことで寿命を延ばすことができている、と!そういうことでございます!」
「え…」
「…なら、私には死にかけている者を生かせる能力があるということか?」
それはすごいけど、でも。
男だった場合どうするの。
小さな子供とか、お年寄りとか。
あの方法で助けるの…?
咄嗟に想像してしまったのをどうしてだか感づいた鷹男に睨まれた。
ごめん。
高彬とのこと忘れてた!
「いえ、奇跡的なことですがお二人はよほど相性がいいのか、主上がよほど強く助けたいとお思いなのでしょうね!おそらく誰でもできるというわけではないかと思います。そもそも身体が入れ替わっても支障をきたさない相手というのがまず滅多にいるものではありません!というか、身体を乗っ取ってまで生きようとする人間というのも…」
「だから違うって言ってるでしょう!?ねえ、本当にこの人の言うこと信じていいのかな?!」
だけど気づいてしまった。
よく見れば睡眠も削って調べていたのか目の下の隈はひどく、食事もろくにとっていなかったのだろう、十日前よりも明らかにやつれている。
当然着替えてもいないのだろう、匂う。臭い。髪も乱れてるし辛うじて鳥帽子はかぶってるけどこの前よりさらにあちこち乱れてる!
…寝食を忘れて調べてくれたんだ……。
「では聞こう。私が傍にいて常に生命力を注げば、瑠璃姫はいつまで生きられる?」
「生命力を受けている間はずっとかと!」
「人外になりそうで嫌なんだけど!」
「私が死ねば瑠璃姫も死ぬということか。」
「まあそうですね」
さらっと!
「方法は今までと同じでよいのか。」
えっ、ちょ…!
鷹男ってば何を聞いてるの?!
「はい。深く交われば交わるほど、効果も長続きするかと。」
「それってあたし人間と思われてる?!」
心の底からの叫びだったのに
心外だと言わんばかりの鷹男に言い返された。
「何をおっしゃっているのですか。私は人間以外を抱いたりしませんよ。」
「だっ…?!だ、だだだだだだだだだ……っって!」
「では瑠璃姫の胎内に私の子が宿ったとしたらどうなる」
「さっきから鷹男何言ってるのーーー??!!」
「そうですねぇ…主上の御子様ですから御子様も神の末裔になりますので、胎内に宿している間は何もしなくとも生きられるかと思われます。それも長期間体内に生命力そのものが滞在するわけですからかなりの効果があるかと。出産後も当分はもつのではないでしょうか。」
「ふむ………」
その後のことは、もう。
されるがまま、だった。
「入内してもらうしかないですね」
にっこりと、
それはそれは嬉しそうに
真っ黒黒な笑顔で言い放った鷹男は
「私がずっと姫を生かしてさしあげますからね」
気のせいではなく若干人格が変化していたと思う。
「死にたくはないでしょう?瑠璃姫……」
そうしてあたしは
抵抗も反論も全て封じ込められて
あれよあれよという間に
気が付けば女御様になっていたのだった。
だから、
今でも時々。
派手な喧嘩をするとあたし達は入れ替わってる。
仕返しにわざとそれを狙うこともあったりなんかして。
でも、
これくらいの仕返し、
許されると思わない?
完
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