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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第二十八話 左大弁家二の姫・柊花(小萩)

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拍手御礼小説掲載
「姫宮様を……あたしが?!」

生まれ変わった瑠璃姫様は、ご自分が姫宮様を産んだことを、覚えていませんでした。

「じゃあ…今上帝のたった二人の御子のうちの一人はあたしの子、なの……?」

懐妊されていたことすら覚えていないらしく、覚えている記憶は懐妊する前までらしかったのです。その理由を推測すると、胸がしめつけられる想いがいたしました。

「母子ともに危なかったのですが瑠璃姫様は……姫宮様を無事にご出産されて後に…亡くなられたのです…」

「そう……だった、の……あたしが……」

「………以前の瑠璃姫様によく似た皇女様でございましたよ。利発で愛らしくて……主上は姫宮様をお手元から離さず、自らそれはもう大切に、大切にお育てになっていらっしゃいました」

たった一人の、瑠璃姫様の忘れ形見。瑠璃姫様が大好きだった皆が、姫宮様を大切に慈しんでおられました。
わたくしも姫宮様が二つの時に死んでしまったから、
それ以降のことはわからないけれど。
今でも降嫁することなく主上のお傍にいらっしゃると聞く姫宮様は、もう御年十八になる。生まれ変わった今のわたくし達よりも年上なのが…皮肉でございます。

「……そ、っか……そう………あたしに、よく…似てるの……………会いたいな……」

会いたい、と。
小さく掠れた声で呟いた瑠璃姫様に

わたくしはまた胸が締めつけられ


切なさにぎゅっと、瞳を閉じました。










「長恨歌」第二十八話 左大弁家二の姫・柊花(小萩)










それから何度も、瑠璃姫様は夜に邸を抜け出し御所に行こうとしました。

「あたしの娘ならこっそり出歩いててもおかしくないわ。御所の近くまで行けば会えるかもしれない」

そんなことを言って、無謀なことをしようとする瑠璃姫様を必死に止めました。
前世の瑠璃姫様を思えば確かにそうかもしれません。けれど、あちらは皇女様なのです。そう容易に抜け出せるとは思えません。

「小萩は知らないからよ。帝だって東宮の時は身代わりを立てて抜け出してたのよ?」

確かにそのようなことを前世でちらりとお聞きしたことはございました。

「おやめくださいませ!それでも危のうございます!夜盗にでも遭遇したら…それに、以前とはご身分も違うのですよっ」

牛車はともかく、護衛の質は
内大臣家の姫君であらせられた頃とはどうしても同じとはいかないのです。
もしももまた瑠璃姫様の身に何かあれば。
再び瑠璃姫様を喪うようになったら……

そんなことは耐えられない。

二度とあのような想いはしたくない。

二度と瑠璃姫様を喪いたくない…!!

前世と同じように動き回ろうとする瑠璃姫様。けれど少しでも危険なことはしてほしくなくて、瑠璃姫様の身に危険が及ぶかもしれないと考えただけで恐ろしく、必死にお止めしては懇願しました。

「……小萩…」

ごめん、あたしが悪かったわ。
だから泣かないで、と。

瑠璃姫様がおっしゃって
わたくしはわたくしが泣いていることにようやく気づくほどでございました。

「わたくしの方こそ……瑠璃姫様のお気持ちをわかっていながら…申し訳ありません…」

産んだことすら忘れてしまっていたたった一人の姫宮様に
会いたくないはずがないことを。
どんな小さな可能性でも賭けずにはいられないほどのお気持ちであることを。
理解していながら…

「わたくし……わたくし、…東宮様に入内しますわ!!お父様にお願いして、なるべく早く!ですから!ですから……っっ」

できればあの場所へ戻りたくはなかった。瑠璃姫様を喪う原因になった場所だから。
けれど、瑠璃姫様が望むなら。
瑠璃姫様が行くのなら、わたくしもお伴するのは当たり前のこと。

そうよ、わたくしは前世も今世も瑠璃姫様の女房。
腹心の女房。
常に瑠璃姫様の味方でいなくてどうするの。
瑠璃姫様の望みを、わたくしが阻んでどうするというの。そんなわたくしが腹心の女房だと、胸をはって言えるの?

「小萩…?でも、」

「主上も姫宮様も瑠璃姫様を待っていらっしゃいますわ。」

本音を言えば、今でもあの場所は恐ろしい。
今度はわたくしが妃として入内する身であるから、危険が及ぶのはもしかしたらわたくしなのかもしれないのですから。
けれどどのみち、左大弁家の二の姫として生を受けたわたくしは、柊花の入内は決まっているのです。

それに、瑠璃姫様が生まれ変わっていると知ったら

主上はどれほどお喜びになられることでしょう。

誕生と同時に生母を亡くした姫宮様も…姿形は違えどようやく母君に会うことが叶うのです。
わたくしの小心で、それを阻むことはきっと許されない。

「戻りましょう、姫様…もう一度、あの場所へ。主上の元へ……今度はわたくしがお連れしますわ」

わたくしが更衣になり、瑠璃姫様が女房となって、

戻りましょう。

本来の、瑠璃姫様のある場所へ。

主上のお傍へ。

「主上は今でも瑠璃姫様をお忘れではないはずですわ。きっと…いえ、必ず。今でも瑠璃姫様を想っていらっしゃいます。」

だって、わたくしは見ていたもの。
瑠璃姫様を亡くされた時の、主上を。
茫然としながらも、主上の嘆きと怒りを見ていたもの。
あれほどまでに哀しみ、怒り、吼えるような慟哭をした主上を見たのは、初めてでした。
そしてぴくりとも動くことのない冷え切った表情で、
事件に関わった人間達を処刑していくお姿…。

主上、

あなた様は今でも、苦しんでおられるのでしょうか。

先に逃げたわたくしが先に瑠璃姫様に再会するなど、申し訳ないことでございます。

「そう……かな………そう、思う…?」

「もちろんでございますとも!お二人のことを誰よりもお傍で見てきたわたくしが保証しますわ!」

ですからもう少しだけ、お待ちくださいませ。
逸るお気持ちはありましょう。けれど、危険を犯さずとも直に会えるはず。





弾正尹となられた融様が訪ねて来られたのは


それから間もなくのことでございました。





続く


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