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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第二十九話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)

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午後になり、急に邸全体が慌ただしい気配に包まれた。
理由を探ればどうやら急に客人を迎えることになったらしく、左大弁様よりも高位の貴族なのか、迎える準備に多くの家人が駆り出されていた。

「どなたがいらっしゃるのでしょう?」

「さあ…誰かはわからなかったわ」

もしかしたら入内に関することで、東宮様がその気になって事態が進みでもしたのだろうかと首をかしげた。
けれど二の姫の殿舎にこれといって指示はなく、あたし達は常と変わらず過ごすしかなかった。焦らなくても後で女房仲間の誰かに聞けばわかるだろうと、自分達には関係のないことだと考えたのだ。
本当に入内に関することであれば関係あるけれどどのみち、今のあたし達は受け身でいることしかできない。

だから先触れが来た時には本当に驚いた。

「客人を迎える用意をしてください」

と、聞いた時には伝える先を間違えているんじゃないかとさえ思った。
小萩…今の二の姫様は東宮様に入内予定なので基本的に面会するのは難しい。万一にでも間違いがないように厳重に注意されるからだ。

「二の姫様にお客様でございます。透子は二の姫様のお傍に控えているようにとのことです」

「あの、お客様とはどなたでしょうか?」



「弾正尹様でございます」










「長恨歌」第二十九話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)










「今の弾正尹様って……小萩知ってる?」

「いえ…ですがここよりずいぶん高位の貴族には間違いないですね」

そう。あのお歳で左大弁止まりの左大弁様は言ってはなんだけど身分でいえば中流貴族。内大臣だった父様や右大臣だった高彬のお父上が大貴族になる。それに比べると弾正尹は若干下にはなるのだろうけれど左大弁様よりも身分が上なことに変わりはない。

「それにしても慌ただしいわ。前もっての約束ではなく急に決まったことなのではないかしら。」

問題は用件だ。
邸の主の左大弁様に用があるのが普通なのに、その姫君である二の姫に、とは。
一体どういうことなのだろうか。

「入内のことでしょうか?」

「そうね…そうとしか考えられないわよね」

でも身分的に更衣にしかなれない姫の入内に関して、一体何の用件があるというのだろうか。そもそも、姫君本人に面会しようとする用件など、そうそうあるものではない。

「とにかく小萩…二の姫様は御簾の中へ。お通しする準備をします。」










やがて心なしか早歩きの足音が近づいてきて
あたしは平伏してその時を待った。
聞こえた足音は一つだけで、女房達をつけず弾正尹様はお一人でやって来られたようだった。
あたしの前を通り過ぎた一瞬、感じた香に、懐かしい気持ちが沸き起こって、三条邸の思い出が頭を過った。

御簾の前、弾正尹様が座る気配がして

「初めまして、二の姫。突然の訪問で驚かせてしまいましたね。申し訳ない。」

柔らかな声がした。
遙かに上の身分の御方なのに物腰が柔らかく、優し気な声としゃべり方は二の姫様に対する気づかいがあった。
けれど、それよりも…

この声…

似てる……。
小萩の言っていたことがわかる。本当だ、十八年も経っているのにその声が似ているとわかる。
あの『融』に……。
瑠璃姫の弟だった、融に、よく、似ているのだ。

「…そちらの女房が、透子、だね……?」

続いてあたしにも声がかかり、慌てて返事と同時に顔をあげた。

「っは、はい。弾正尹様にはお初にお目にかかります、透子と…―――――」


融!!!


呼吸が止まる。もう返事なんてできない。
融だ融だ融だ…―――!!
間違いない。あたしの弟の融……!

歳はとってるけど、すっかり幼さはなくなってあの頃からじゃ想像できないような威厳まであるけど、あたしを見る瞳にもあの頃にはなかった鋭さが、何かを探るような色があるけれどだけどだけど――!

融だわ!

「………っ」

きっと御簾の向こうで小萩も同じように驚いて息を飲んでいるはず。
まさか急に会いに来た弾正尹様が融だなんてこんな偶然が起るなんて……っ!

「……どうした?驚いているみたいだけどわたしの顔に何か?」

「っっい、いえ…っ申し訳ありません……っ」

駄目だ、声が震える。不自然すぎる。
でも、動揺が抑えきれないっ!

あああああ、どうしようどうしたらいい?

融だわ融よ、間違いない弟の融だわ!!
あたしがあんたの姉の瑠璃だって打ち明ける?でも信じてもらえる?今の透子が昔の瑠璃姫だっていう証拠なんて何もないのに!第一、打ち明けたとしてそれから?わからない。わからないけど――っっ

「弾正尹様……?」

動揺するあたしを見かねたのか、御簾の向こうから小萩が直接声をかけた。今の小萩は立派な姫君なので初対面の殿方に多くの言葉はかけられない。呼びかけるだけが精一杯だ。
小萩だって同じくらい驚いてるはずなのにとそんなことまで計算して口調を変えてきた小萩に気づいてようやく少しだけ、あたしも落ち着きを取り戻す。

弾正尹様の、融の視線が、
あたしから御簾に戻る。

「……ええ、少し、確認したいことがありまして。」

「確認、ですか…?それはどのような……」

入内する姫がどんな姫なのかの確認かしら?でも、融の視線はその後再びあたしに戻ってきたまま、ぴたりと視線を合わされて動かない。

「この場で聞いてしまっていいものなのかどうか迷いますね」

「え…?」

「二の姫、あなたについても確認したいのですがその前に」

まずはあたしと二人きりで話がしたい、と。


弾正尹になった弟の融が



あたしだけを見据えて言った……―――。





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
イケズwwwwすみません( *´艸`)決してわざとでは。あのまま続けると長すぎるんだもの~。

次話、姉と弟の再会です!再会というかずばり!お前の正体見破ったりい!な展開です。
ここはすごく難しいだろうなと思いつつ書いていたのですが、融が自分から動いてくれて案外スイスイ書けたような気がします。どうやって瑠璃だと見抜く展開にしようかなあと決めずに書き始めたんですが。腹黒に成長した融くんの活躍をお楽しみくださいませ!(^^)!
2018.06.21 23:58 | URL | #- [編集]
雪 says..."ハニーさま"
すみません(*ノωノ)焦らすつもりであえてあそこで切ったわけではなく、
書いててある程度の長さになったのと、区切るのにちょうどよかったのでwww
続けたらすごい長さになっちゃうから!

さて、お待たせの姉弟の再会の時です!!
今度こそ、ご期待に添えるかと思いますよ♪まあ、次は次へまた気になっちゃうかもしれませんが。。

2018.06.21 23:54 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.06.20 23:20 | | # [編集]
ハニー says...""
わーー!
ついにこの時がっ!!
前回のコメントで予告されていたので
もう、ドッドキしながら、はやる気持ちを
なんとか抑えつつ読みました。

でもここで切ったかーーーっ!
イケズです!く〜〜〜っ…
次も!次も楽しみにしてますね!!!
2018.06.19 07:34 | URL | #- [編集]

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