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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第三十一話 弾正尹・藤原融

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拍手御礼小説掲載
「馬鹿…っ!な、なんでそんな……そんな簡単に、信じるのよっっ。だからあんたは心配なのよ昔から!」

姉さんはぼろぼろと涙を流して泣いた。
せっかく美人に生まれ変わったのに台無しなくらいの泣きっぷりで不細工になってる。

「な、なに、笑ってる、のよっっ」

「ごめんごめん嬉しくて。」

姉さんは泣きながら怒るという器用なことをして僕を睨みつける。それからこたえた様子のない僕にむっとした顔になって、手の平で涙をぬぐった。
こんなに若い女房を号泣させて、知らない人が見たら誤解される光景だよなあ。なんて考えてたんだけど、僕の顔は尚にやけてたらしい。

「信じられない…あたしまだ、瑠璃だなんて言ってないのに……」

恨めし気にしながらも「本当に大丈夫なの?変な女に騙されてない?」と続けた姉さんは、やっぱりあの、僕の姉さんだと思った。
だって今の僕にそんな心配をする人間は姉さんくらいしかいないからね。

「まあ、ほぼそうだろうなと確信してたからね。姉さんの生まれ変わりだって。」

今もそうだ。姉さんの名前、僕だってまだ口にしてないからね?その前に僕の名前も叫んでたよね。そんなの、ただの女房が知ってるはずないじゃないか。
そう言うと、僕のこと以外にも思い当たることがあるのか、姉さんは微妙な顔になった。
それからやっと涙の止まった姉さんが、ようやくさっきの僕の言葉について聞いてきた。

「確信ってなんで…なんであたしだってわかったの?だって、今のあたしは瑠璃姫だった時とは何もかも違うのに。生まれ変わりだとか…簡単に信じられることじゃないでしょう?」

「探してたんだよ。」

「探してた…?」

藤宮様から転生の話を伺ってから。
阿闍梨殿にも陰陽師にも話を聞いて。
ありえないことではないことを知った。

僕は頷く。

「そうだよ。姉さんならやられっぱなしで終わるはずないじゃないか。突拍子もないことをするのが姉さんだろう?なら、生まれ変わっててもおかしくない。」










「長恨歌」第三十一話 弾正尹・藤原融










「…失礼ね。」

駄目だ。嬉しくてやっぱり顔がにやける。姉さんがどんどん不機嫌になっていくばっかりだ。

「だから探してたんだよ。姉さんの生まれ変わりを。」

「よく見つけられたわね…そもそもどうしてあたしだってわかったの?」

だからどうしてそう、僕を笑わせようとするのさ!

「なっ…なんでまた笑ってるのよ!融!!」

「ごめ……っだ、だって………」

『瑠璃姫が聞いたら怒られますわよ。』藤宮様の言葉が蘇る。それに対し僕は『軽く殴られるかもしれませんね。』と言ったんだっけ。普通じゃない姫を探して見つけただなんて話せば本当に殴られそうだ。でも、それすらも嬉しくて。
僕は再び笑いの発作を起こして姉さんを怒らせる。まずいなあ、これじゃ軽く殴られるどころじゃすまないかもしれない。
僕は一先ず、本当の理由は仲裁者になってくれそうな藤宮様がいる前でしようと決めて

「噂を集めたんだよ。その中で姉さんがひっかかったのさ。」

ととりあえずあまり怒られなさそうな理由を口にする。

「あたしが噂になってるの?!」

「正確には噂じゃなくて情報かな。姉さんが生まれ変わってる可能性に思い当たって十七、八歳の姫の情報を集めた。そしたら、姉さんがひっかかったってわけ。」

「人を魚みたいに言ってくれるわね」

今度はふくれっつらだ。生まれ変わっても姉さんは表情豊かで感情がそのまま顔に出る。……今の主上とは、正反対だ。

「で、主従が入れ替わったような姫と女房がいる情報を掴んだ。」

「あ…っ」

思い当たったのだろう、姉さんが少し青ざめた。
本人達は隠しているつもりだろうからこそ、部外者の僕が知っている事実に青ざめるのも無理はない。実際には、二の姫にはりつくようにして様子を伺っていたからこそわかったのだけど、それでも脇が甘いのは否定できないところだ。

「記憶があるかどうかが心配だったんだけど…よかった。」

僕の顔を見た瞬間の反応でそれも大丈夫だとはわかってたけどね。
それでも、姉さんが姉さんで、ちゃんと僕のことを覚えてくれていて……今、僕は泣きそうなほどに、嬉しい。

「……………融?」

姉さん、

姉さん、姉さん、姉さん……

「姉さん…」

会いたかった
会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった

「ちょ…っ?!泣いてるの!?」

「ごめ…っっ、」

だって、嬉しいんだ。
嬉しくて嬉しくて涙が出るほど嬉しくて。

「あれ……おかしいな…なみ、だが…止まらない、や…っ」

「…馬鹿ね。……相変わらずなんだから。もう、いい歳してるくせに。」

だって、仕方ないじゃないか。姉さんのせいだ。
今の僕を知らないからそんなこと言えるんだよ。今の僕は、主上の片腕で、泣く子も黙る弾正尹なんだよ。今の僕に歯向かう人間なんてほとんどいないほどなんだから。想像もつかないだろうけどさ。
泣くのだって、姉さんが死んで以来なんだから。本当だよ……泣くのは、十八年ぶりなんだから…。

「ありがとう、帰ってきてくれて。ありがとう、覚えて、いてくれて……」

ありがとう、ありがとう、と。


僕は


姉さんに抱きしめながら長い間、泣き続けた。


僕を抱きしめる姉さんの姿は、僕よりも若い女房ではなく、昔のままの、あの、姉さんの姿に見えた―――。





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
ふふふ、左大弁への説得は融が上手くやるはずです( *´艸`)
そんな感じに言い含めているのかもしれませんね~
高彬と融との仲についてはすでに書いているので更新をお待ちください。そのうち出てきますので!
あれこれ盛り込まないと不明瞭なことが多くてどんどん長くなっていくよ~( ;∀;)
2018.06.27 22:27 | URL | #- [編集]
雪 says..."ハニーさま"
感想ありがとうございます!
突然の姉の死は、それまでぼんくら弟だった融には衝撃で、すっかり性格が変わっちゃったほどでした、と(-_-;)
融の気持ちに共感してくれてよかったです。

今後の展開の推測も…( *´艸`)何がどこまで的中しているか、ぜひ楽しみにしてくださいませ。
私でもまだどうなるかわからない部分はありますが。最終的にはもちろんハッピーエンドで終わりたいと考えております。
2018.06.27 22:24 | URL | #- [編集]
雪 says..."リンリンさま"
コメントありがとうございます!
ひっぱっちゃってる感があり、申し訳ないです💦
もう少し、姉弟の邂逅が続きますよ。
そしておっしゃる通り、融との再会をきっかけに、これから前世の知人との再会が…?!
2018.06.27 22:19 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.06.26 22:22 | | # [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
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2018.06.25 20:57 | | # [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.06.25 00:17 | | # [編集]

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