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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第三十三話 左大弁家二の姫・柊花(小萩)

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拍手御礼小説掲載
今後のことなど、まだまだ、お話を伺いことはたくさんあったのですが
わたくし達の今の立場ではあまり長時間お会いするわけにはいかず、

融様は後ろ髪ひかれるように、今日のところはと帰ってゆかれました。

「姫様…?」

融様をお見送りして戻ってきた瑠璃姫様は

「どうかされました?」

気のせいか憂い顔で、
何かを考え込まれ悩んでおられるようなお顔をされておりました。

「小萩…」

瑠璃姫様はくしゃり、と顔を歪ませて

「あたしはどうしたらいいかなあ…?」

と。

泣きそうなお声でおっしゃったのでした―――。










「長恨歌」第三十三話 左大弁家二の姫・柊花(小萩)










左大弁である今世の父は、"透子"を信頼しておりますからわたくしが傍に透子だけを置きたがることに何かを言われることはありません。入内したとして、更衣にしかなれぬ身で連れていける女房は少なく、その一人にと父自身も望んでいる"透子"には信頼があるのでしょう。

突然の弾正尹様の来訪と面会については、融様の方から上手く説明をしてくださったようでございます。

「素晴らしい姫君と頼もしい女房だと仰せだったぞ。主上の片腕である弾正尹様のお墨付きをいただけるとは心強い。」

と、融様が帰られた後にやってきた父は言いました。
東宮様の後宮に入る予定の姫君を、内々に面談しているのだとでも言ったのでございましょう。

「透子が上手く言ってくれたのであろう?よくやった」

「いえ、あたしは…」

融様は瑠璃姫様と話し込まれていたのですから、父がそう考えるのも当然です。
このことで余計に父の"透子"の信頼は厚くなり、
わたくし達は二人きりで時を過ごすことが許されるようになりました。

ですから心置きなく、わたくしは小萩に戻り、瑠璃姫様のお話を聞くことができました。

融様が透子を見つけ、瑠璃姫様だと見抜き、疑うことなく信じてくださった。融様は今では主上の片腕にまでおなりというのですから、すぐにでも主上や姫宮様と再会が叶うのではないでしょうか。融様が信じてくださったのですから主上も瑠璃姫様だとわかってくださるはず。内大臣様も娘と認めてくだされば猶子にでもなって、女御として堂々と再び入内できるのでは。そんな風に、浅慮なわたくしは考えていたのです。

ですが…

わたくし達が生まれ変わっているという事実を、

わたくしはあまりに簡単に考えすぎていたようでございます。

正確に言えば、瑠璃姫様のお心を、簡単に捉えすぎていたのでございます。

「父様のこと………もう、あまり長くないだろうって言ってた…」

「ええ…」

内大臣様、いえ今は返位していらっしゃいますから前内大臣様ですわね。融様のお話では前内大臣様はすっかり老け込んで、寝たきりになっていらっしゃるとか。お年もあって、もうあまり長くはないだろうというお話でございました。お年を考えれば、長生きされている方なのです。
前内大臣様は内大臣にまでなった大貴族でありながら珍しく子煩悩な方でしたから、瑠璃姫様もお辛いのでしょう。

「融様もおっしゃっていましたが一日でも早くお会いに行かれた方がよろしいかと。今の瑠璃姫様ならば難しいことではございませんわ。」

姫君でいらした頃も、瑠璃姫様は簡単に出歩いていらっしゃいましたけれど。
女房になった今では尚更、邸から出かけていくのもどこかの邸を尋ねるのも、そう難しいことではないでしょう。融様もお迎えにきてくださるでしょうし前内大臣様への面会はきっと容易く叶うはずです。

「…信じてもらえないかもしれないと、不安なのですか?」

けれど瑠璃姫様は違うと否定しました。

「父様も融もわりと単純だから…それは多分信じてもらえると思う。だけど、」

ええ。瑠璃姫様もでございますわよね。
ご家族ですもの。
皆様似ておられますわ。

「………いいのかなぁ、と思って……」

「いい…?」

瑠璃姫様のおっしゃることがわたくしはすぐには、理解できませんでした。
それはわたくしの前世の境遇のせいなのかもしれません。

「だってあたしは…あたしは今は……透子なのよ……」

「それは……………あ、」

瑠璃姫様の悩みの理由に、ようやくわたくしも思い至りました。

「透子なのに…どんどん瑠璃姫に戻って……そのうえ前の親に会って………それって、」


今の両親を傷つけることにならない?


と。
瑠璃姫様は哀しそうに微笑みおっしゃったのです。

「それは……」

わたくしには、どうお返事をすればいいのかわかりませんでした。
前世の両親を、思い出さなかったわけではありません。けれど小萩の両親は早世していて、記憶の多くには存在しません。ですからわたくしはすんなりと今世の両親を受け入れることができましたし、前世の両親へ申し訳ないという気持ちはほとんど沸きませんでした。けれど瑠璃姫様は違います。今世でも前世でも、ご両親は健在であり大切にされてきた。だからこそ、複雑に思い悩み、葛藤が沸き起こるのでしょう。

「父様には会いたいわ。すごく会いたい。会って謝りたいし、生まれ変わったから平気って伝えたい。もう長くないだろうって聞いて会いたくないわけがないわ。」

でも、でもね、と。
瑠璃姫様は切々と訴えました。

「『父様』って呼んでいいの?それって許されるの?透子の両親はちゃんといるのに、別の人を父様って呼ぶってことは今の両親を否定することにならない?今の父は父様ほど子煩悩な人じゃないわ。それでも、全く大切にされていなかったわけじゃないの。なのに…なのに、『透子』を消すようなことをして許されるのかしら……っ?!」

「姫様……」

なんと返せば、よかったのでしょうか。
わたくしはいつも、お傍にいるだけで何もできない。
瑠璃姫様が悩まれている時も困っている時も、わたくしは何の助けにもなれず、ただお傍にいることしかできなかった。

「それで先程…融様にお返事されなかったのですね……」

前内大臣様のことを言われた時、瑠璃姫様は何もおっしゃいませんでした。ただ困ったように曖昧に微笑まれただけで。
融様も不安そうなお顔でしたが追及はされませんでした。融様は瑠璃姫様の葛藤をわかっていたのでしょうか?

「わからないのよ……」

似て異なるわたくしの立場では瑠璃姫様の葛藤を推し量ることしかできません。透子の両親を知らず三条邸でお世話になった小萩は前内大臣様を擁護したくなりますし、愛されている二の姫としては今世の両親を擁護したくなります。おそらく、正解はどれという問題でもないのでしょう。
ですからわたくしにはどちらとも言えず、わかりません。
ですからわたくしに言えるのはこれだけ。

一つだけです。


「わたくしの知る瑠璃姫様も透子も、考えるよりまず行動の方ですわ。やらないで後悔するよりもやって後悔する方がいいと、そんな御方ではありませんか?」


そしてそんな生き方の方が瑠璃姫様にも透子にも


きっと似合っていて、"らしい"と思うのです。





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
近江の正室母子についてはそのうちまた再登場させたいなとは思っております( *´艸`)その時どんな展開にするかはまだ決まっていないのですがスカッとする展開にしたいなあとは漠然と考えておりますよ♪
まあ、私はいつも大雑把には決めてても書きながら決まっていく感じなのでどうなるかは書いてみないとわかりませんが。
彼女達の再登場をお待ちくださいませ。
2018.07.02 23:19 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.07.02 01:41 | | # [編集]

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