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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第四十二話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)

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「姉さんに会ってほしい人がいるんだ。僕の妻…の、一人なんだけど、きっとびっくりするよ」

そんな融からの文が届いて数日後、
本当に驚くような人物があたし達に会いに来た。










「長恨歌」第四十二話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)










そりゃあ融だってもうとっくに結婚しているはずで、貴族の常識でいえば妻も一人じゃなく複数いて当然で。
元姉としては相手がどこの姫なのか気になるというもの。
だから紹介してくれるというのは嬉しいけれど、向こうがこちらに訪ねてくるなんて普通に考えればありえないことだ。こちらからといっても簡単ではないはず。そもそも、その妻にどう説明したというのだろうか。結婚したって相手の家族に会うことはないものなのに姉に、それも生まれ変わりに挨拶したいなだんて相当変わっている。

でも、それも相手を見た瞬間納得した。

これは驚くわよ……!

「あき…っ」

口から出そうになった名を飲み込んで
目の前に座る姫君をまじまじと見つめた。

派手な美貌は変わらないけど目尻の皺にますますの貫禄を感じる。扇で半分だけ顔を隠して、じろりとあたし達を睨む様子は知り合ったばかりの彼女に重なった。
御簾の向こうの小萩からも驚きの声が漏れた。

一体どういうことなのか、聞きたいことはたくさんあるけれど
融からどこまで聞いてここにいるのかがわからないから聞けなくて、あたしも小萩もすぐには言葉がでなかった。

「あ、あの…」

それでも逸る気持ちを抑えられず、問いかけようとして発した声は遮られた。

「わたくし、弾正尹の妻で水瀬宮家の煌と申します。」

知ってる!
いや妻になってたのは知らなかったけど!妻ってところをやけに強調するわね!

「わたくしの実家は零落した宮家でしてね、父が死んで後は家人に家財を騙し取られたせいで日々の生活にも困る有様でした。ですからわたくし、信条にしていることがありますの。」

ああ、それも。
なんだか聞いた覚えがあるわ。

煌姫は片手をあげて、指を立てた。

「ひとつ…『人を見たら泥棒と思え』。―――…ふたつ、『うまい話しには裏がある』。」

姫君らしからぬ強烈な信条だけど、苦労した煌姫の過去を思えば頷ける。昔聞いた時も、驚きはしたけど感心した気持ちの方が大きかった。両親を亡くして家人にも見放されて、そんな中で生き抜いてきた煌姫は、しぶとくて強い。素直にすごい人だと思った。

煌姫が扇を閉じると

「…驚きませんのね?さすが、融様を騙した悪女といったところかしら。でも、わたくしは騙せませんわよ。」

鼻で笑う。
しかもこちらを見下すような嫌な笑い方で。

あれ、煌姫ってば融からどう聞いてきたの?
あたしも小萩も生まれ変わりと信じてもらえてないどころか融を騙そうとしてる極悪人になってる?

「左大弁家の姫君ともあろう御方がとんでもない悪女を雇っていますのね。恥ですわよ。」

「ちょっと…!!」

煌姫は方眉だけを不快そうに歪めてまたあたしを睨んだ。

「『ちょっと』?お前…女房の分際でこのわたくしに今、『ちょっと』と言ったの?」

「…っだ、だって……その、」

「ああ、お前、融様の姉君のふりをしているんでしたわね。だからわたくしにそんな口を聞けますのね?融様は亡くなられた姉君同様、お人よしですからね。さぞ簡単だったでしょう。ですが……わたくしが融様をお守りしますわ。死んだ、姉君に代わって。」

「…あの、煌姫様。何か誤解があるようですわ。」

御簾の奥から小萩が遠慮がちに否定してくれるけど

「誤解?二の姫様、あなたも騙されていますの?それともこの悪女とぐるなのかしら?」

「ぐるって…!」

煌姫はとりあわない。

ちょっと融!
なんなのよこれ!
なんて状態で送り込んでくるのよ!どうしろっていうのよもう!!

「………わたくし、怒っていますの。」

怒りたいのはこっちの方ですけど?!

ああああ、身分差がいまわしい!
ここであたしが言い返して二の姫の小萩や左大弁家、ひいては近江の両親に迷惑をかけるかと思うと言い返せないのが悔しい!

そんなあたしを嘲笑うように煌姫は続ける。

「それはそれはとても、ものすごく、怒っていましてよ。簡単なことでは許せないほどに、ですわ。」

「…あたしにどうしろとおっしゃるのですか?」

融にもう会うなって?
詐欺だとでも認めて謝罪しろってこと?
我慢してるつもりでも睨んでしまいそうだ。

「あの、煌姫様。る…透子は」


「わたくしが何に怒っているかおわかりになって?十八年…十八年、ですわよ?十八年も……哀しみ苦しんでいるわたくし達をあなたはほっていたのですわ!!!」


「………え…?」

「煌姫様…?」

「生まれ変わっているなら何故すぐに会いに来なかったのです!!!どれだけわたくし達が瑠璃姫を待っていたと思っているのですか!!!そもそも!あのようにあっさり殺されるなど瑠璃姫どうかしていたのではなくて?!初めての懐妊に浮かれすぎていたのでしょう!いくら身分がおありでも後宮は女の魔の巣窟だと童でも知っていることですわよ!!瑠璃姫!あなた危機感がなさすぎですわよ!!そんなだから毒など盛られるのです!!!みてご覧なさい!承香殿女御様など瑠璃姫より先に入内していまだにぴんぴんしていらっしゃるじゃないの!」

「……………ご、ごめんなさ、い……?」

ちょっと展開が急すぎてついていけない…!

え、さっきまで悪女だの騙されないだとか言ってたわよね?!あれはなんだったの?!煌姫は瑠璃だって信じてくれてるってことでいいの?!態度がころころ変わりすぎてわかりにくい…っ

「煌姫…様……?」

今度は御簾の奥の小萩に向かって煌姫は睨みつけた。

「小萩も小萩よ。後を追うように死ぬなんて愚か者のすることですわ!生まれ変わってでも瑠璃姫の傍に戻ってくるのは見上げた忠誠心ですけれどねっ、腹心の女房ならば瑠璃姫が生きることを何より望んでいたことは知っていたでしょうに!!」

「…煌姫様のおっしゃる通りですわ……」

「ならばさっさとそこから出て顔をお見せなさい」

「はい…」

え~っと…

これは……

「煌姫?あたし達が瑠璃と小萩だって信じてくれてるのね?」

そろそろと御簾の奥から出てきた二の姫こと小萩と、透子のあたし。あたし達の今の姿を煌姫はじっと見つめたかと思えば
扇で顔を隠した上そっぽを向いてしまった。けど、

扇で隠された端から覗き見える顔も耳も、赤かった。

「死んで生まれ変わってくるなんて芸当ができる人間はあなた達くらいしかいないじゃないですのっっ全く…生まれ変わっても物の怪にとり憑かれてるんじゃありませんのっ」

「煌姫……」

声が震えていた。
泣いているような、声だった。
そっと小萩と目配せして、そのことには気づかないふりをしようと思った。
だって、泣いてるだなんて指摘したら、この高貴で気の強い友人は、きっとまた怒りだしてしまう。

「………わたくしだけ除け者にして二人楽しく第二の人生だなんて…ずるいですわよ」

「はは……ごめん、煌姫」

「わざとじゃないのでお許しくださいませ、煌姫様」

「ふんっ……そう簡単には許してあげないんですからねっ」


こうして。


また一人、



前世の知己と再会を果たしたのだった。





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
今回、煌姫は融の妻になってますwww
今の融になっているのも内助の功があってこそかもしれません。
藤宮と煌姫の邂逅は考えてなかった!なるほど~。同志として会っていてもいいかもしれませんね!
2018.08.22 23:44 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.08.16 20:40 | | # [編集]

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