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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第四十三話 水瀬宮家姫・煌

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拍手御礼小説掲載
瑠璃姫が後宮にいって、
わたくしはお世話になっていた三条邸を出ました。
お人よしの親友は、自分が出た後の三条邸ではわたくしが居づらいだろうとわたくしのために小さな邸を用意してくれて、
同じくお人よしの弟君の融様にわたくしの世話を頼んでくれました。
遠慮?そんなものございませんわ。だってわたくしは瑠璃姫の親友で命の恩人なのですもの!それに恵まれた人間が困っている人間に手を差し伸べるのに断る必要なんてありませんでしょう?有難くお受けしましたわ。そうしないとわたくしには生きていく術がなかったのですもの。










「長恨歌」第四十三話 水瀬宮家姫・煌










亡き姉君の親友を姉の遺言で援助している。それが、世間一般のわたくし達に対する認識でした。
けれど瑠璃姫の死後、一年、二年、三年と…時が経つにつれ、瑠璃姫のことを忘れた人々はわたくしを融様の愛人だという目で見るようになりました。
そのことを申し訳なく思った融様は、わたくしに再三、結婚相手を紹介しようとおっしゃってくださいました。融様の紹介ですから、良いお相手なのでしょう。わたくしの結婚相手に求める、身分と、財力。きっと満たしていたはずでございます。
けれど、わたくしはそれらに加えてもう一つ、どうしても譲れない条件ができていました。
絶対に、それだけは。何が何でも譲れない絶対的な条件。それは

「瑠璃姫の価値をわかっている方でなければ嫌ですわ。瑠璃姫の悪口を言う男など論外。瑠璃姫が殺されたことに関してすぎたことと忘れている男も許せません。瑠璃姫の素晴らしさを理解して尚且つ、瑠璃姫が殺されたことに怒りを持ち続けている方でなければ結婚しても何をしてしまうかわかりませんから、融様にご迷惑をかけてしまいます。」

でした。

「………なるほど、煌姫。僕はあなたを見くびっていたようですね。申し訳ありません。あなたは…僕達の仲間だったのですね」

わたくしの言葉を聞くと融様はそうおっしゃって。
とても魅力的な、黒い笑顔で嗤ったのでした。
そうして手を差し伸べてきた融様はおっしゃいました。

「ならば僕の妻になりませんか。煌姫の名誉のためにも愛人と思われたままではいさせられません。そんなことをしては姉さんに叱られてしまう。」

「まあ…」

「もちろん建前上だけでもけっこうです。煌姫が嫌だというなら無理強いするつもりはありません。」

だからわたくしも、にっこりと笑いましたわ。

「ええ、もちろん嫌ですわ。―――建前上なんて。」

「しかし……いいのですか?」

「わたくしの絶対譲れない条件、融様以上に満たす方が他におりまして?」

「…いないでしょうね。」

「決まりですわ。」

融様は始めこそ、形式上だけの妻としてわたくしの面倒を見てくださるつもりだったようですけれど、そんなこと、女がすたるというものですわ。遠慮がちだった融様を、わたくしの方が強引に夫になっていただきました。名実共に、真の背の君に。
身分も財力も、考えてみれば融様も好条件の方ですしね?どうして最初から思い至らなかったのかと不思議なほどでしたわ。
ですが実家の零落しているわたくしでは融様のお力にはなれません。ですからわたくしは進んで、融様と他の姫との縁談を推しました。なにも正室になりたいと望んだことはございませんでしたし、それよりも融様には今よりもっと力をつけていただきたかったのですわ。それに、幾人妻を迎えようと、融様ならわたくしを大事にしてくださると信じておりましたし。だってあの瑠璃姫の弟君なのですもの。

「納得というかなんというか…あたしの覚えてる融とはちょっと違うっていうか…」

生まれ変わった親友は驚きを隠しませんでした。

「本当に融様のお話ですか?」

「一体あれから何年経ったと思っているのです。十八年も経てば人も変わって当然でしょう!」

「それはそうだけど…あの融がねえ…」

瑠璃姫の言いたいこともわかります。
瑠璃姫が生きていた頃の融様はいまいち、男性の魅力に欠けるところがありましたわ。育ちが良すぎるせいなのかぼんやりしていて向上心もありませんでしたわね。好きな姫と結婚したいと、さすが瑠璃姫の弟君というお話も聞いたことがありますわ。幾人か、恋した姫君のお名前も耳にした覚えもございます。

ですが時は人を変えます。

同じように、経験も人を変えます。

瑠璃姫の理不尽な死は融様を変えました。それがいいことなのか悪いことなのか、わたくしには判断はつきませんけれど、仲間であるわたくしにとっては自然なことでございました。元々、わたくしという人間も恨みを忘れない人間ですしね。

「今や融様の方が瑠璃姫よりよほど大人におなりですわよ。」

身体ではなく心がね。
清濁併せ呑む強さを融様は得ておりますもの。

「煌姫が融を絶賛してる……変な感じだわ…」

「本当にお二人はご夫婦なのですね…」

「夫を尊敬し支えてこそ妻というもの。こうみえて、融様との間に二人の子がおりますのよっ」

そう言うと

「えっ!!」
「ええ?!」

二人は同時に声をあげて驚きました。
わたくしはそっぽを向いて、赤くなる顔を扇で隠しました。

「やることやってれば当然の結果ではありませんか。夫婦なのですから。瑠璃姫だって姫宮様を産んでいるでしょう!」

わたくしは知りませんでした。
生まれ変わった瑠璃姫が、死の前後のことを覚えていなかったことも、姫宮様を産んだことも宿していたことすら忘れていたことも。小萩に聞いて初めて知ったということも。
だから、わたくしの言葉に苦しそうな顔をした瑠璃姫を見て、子に会えない辛さからくるものなのだろうと思ったのです。

「……そんなお顔なさらなくても。融様がすぐに姫宮様に会せてくれますわ。」

そう言うと、
瑠璃姫は泣くのを堪えた顔で、無理に微笑んだのです。

「うん…」

「…煌姫様と融様の御子様にもお会いしたいですわね!瑠璃姫様にとっても甥や姪になるのですものね!ね、姫様っ?」

察した小萩も、雰囲気を変えようと明るく声をあげました。

「……そうね。ぜひ会ってみたいな。二人の子供。ふふ…想像つかないや。」

ですからわたくしも、
わざと意地悪で答えました。

「考えておきますわ。」

「あたしは叔母なのよ!会わせてくれたっていいじゃない!」

「破天荒な叔母の影響を受けてはたまりませんもの。」

「それを言う?!」

「言いますとも。」

そんなわたくし達に小萩がくすくすと楽し気に笑って。

「大体ねぇ、『人を見たら泥棒と思え』『上手い話には裏がある』なんてことを言う母親がいるのにあたしから変な影響を受けるもなにもないでしょうに」

「わたくしの教育方針ですわ。足の引っ張り合いの貴族社会で生き抜くには大事なことですわよ。」

「それはそうかもしれないけど」

「だから瑠璃姫も殺されてしまったのでしょう。甘すぎるからですわよ。」

「ぐっ…!そ、それを言われると何も言い返せないけど……っっ」

こうしてわたくし達はしばし、

ふざけた言い合いをして十八年ぶりの邂逅を楽しんだのでした。





続く


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雪 says..."ハニー様"
すみません、本当に…!
もうほんとにほんとに、ひっぱりすぎだってわかっているんですよ!てか、ひっぱるつもりはないんですよ!だけどだけど!再会前に入れときたいエピがありすぎて!鷹男まで辿りつかないんですよ!なんでこんな話数になってるんだろう?!自分でもどうかと思ってます!
2018.08.27 23:25 | URL | #- [編集]
雪 says..."ふにゃろば様"
ありがとうございます。
おっしゃる通り、煌姫ならそんな風に息巻きそうですよね!なので高彬ではなく融と夫婦となっております^m^
2018.08.27 23:22 | URL | #- [編集]
雪 says..."几帳さま"
PCは高額なものなのでなかなかすぐには買いなおすということができませんでした…
もう安い中古を買ったのでもしかしたらまた壊れるかも。。
忘れがちな煌姫と融を、今回のお話では活躍させてますー。
2018.08.27 23:19 | URL | #- [編集]
ハニー says...""
順調な更新が再開され嬉しい限りです。
ありがとうございます。

雪様〜〜
そろそろ待ちきれなくなってきてます。
転生を信じない鷹男と瑠璃姫の再会シーンは
どんなシチュとなるのか
気になって仕方ないのですよ、、、

まだまだ他の方との邂逅シーンもあるだろうし
瑠璃パパにも早く会わせてあげたいし、

でもっ!でもっ!!

ホント、待ち遠しくて生殺しされてますぅ〜
2018.08.26 10:37 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.08.25 01:02 | | # [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.08.23 07:47 | | # [編集]

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