FC2ブログ

沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第四十四話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)

  2 

現在拍手小説はありません
答えの出ない悩みを、解決してくれたのは煌姫だった。










「長恨歌」第四十四話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)










「ところで、融様から聞きましたけれどお父君に会うのを先延ばしにしてるそうですわね」

「………」

俯いてしまったあたしの頭上で、煌姫の溜息が聞こえた。

「なんとなく理由は察しがつきますけれど。」

融も気づいているのだろうか?だからあえて、訊ねてこなかったのだろうか。
あたしを姉と呼んでくれる融に、今の両親が、とは、言いにくかった。

「…本当に、お具合がよろしくないそうですわよ。ぐだぐだ悩んでいる暇はなくてよ、瑠璃姫」

「っっそんなに、なの…?」

「………内大臣様がここまで長生きできたのは、瑠璃姫に再び会うためだったのかもしれませんわね。」

煌姫の言葉が突き刺さる。
寝たきりだという父様。あたしが死んで心労をかけたせいかもしれない。年齢を考えれば、長生きをしてくれている。煌姫の言う通り、こうしてあたしが再び生まれ変わって、会いに行けるようになるまで待っていてくれたかのように。

父様…

生まれ変わって痛感した。
父様がどれほど、あたしや融を愛してくれていたか。大事に大切に育ててくれていたか。
政治の道具としての結婚を強要することのなかった父様。おかしな噂ばかりのあたしを切り捨てることをしなかった父様。結婚も行動も、あたしの好きなようにさせてくれた父様。姫君としては失格のあたしを、嘆いて案じこそすれ、いつもいつも、あたしのことを想っていてくれた父様。生きている間もどれほど心配をかけたかわからない。その度に父様は本気で心を痛めあたしの身を案じてくれていた。

昔のあたしは、父様の愛に、気づいていなかった。

あるのが当たり前で、感謝もしたことがなかった。
失って初めて、痛感した。
貴族の父様ではありえないような、無償の愛があったことを。

どんなに悔やんだだろう。
届かないと知りながらどれほど詫びただろう。

叶うことならもう一度会って、


ありがとうとごめんなさいを言いたかった…―――。


「姫様…内大臣様は、瑠璃姫様が亡くなられて……嘆きのあまり一時は息もできないほどだったそうですわ。後を追うのではないかと三条邸の皆が案じたそうです。」

「……………」

「いいではないの、瑠璃姫!両親が四人だと思えば!少ないより多い方がいいに決まってるのですから!」

「……え?」

「だからっ、今のご両親に申し訳が立たないと考えているのでしょう?そんなもの、悩む必要がありまして?どちらの親も親で何がいけませんの!産みの親と育ての親がいる方だって大勢いるではないですか!」

「まあ!その通りですわね煌姫様!瑠璃姫様だって、亡くなられたお母君様と三条邸の北の方様と二人お母君様がいらっしゃったではないですか!」

「え…?いや……確かにそうなんだ、けど…」

「近江のご両親も三条のご両親もどちらもあなたの親でしょう!幸運ですわよ、瑠璃姫!ご両親が二組もいれば将来も安泰ですわね!」

「え?え~…?そ、そんなのでいいの?」

「いいに決まってます!」

「いいのですわ、姫様!」

「お父君の死に間に合わなくてもいいのですか?本当に死んでしまってからでは遅いのですわよ。後悔は一度で充分でございましょう!」

はっとした。

そうだ。

後悔はもう、一度で充分だ。

死んでからは遅かったことが、普通ならもうどうしようもないことが、
奇跡的に生まれ変われたことで償える。
でも父様も生まれ変われるとは限らない。なら…

「そうね…。どちらの両親もあたしの両親だわ。」

正確に言えば、五人だ。
子供の頃に死んでしまったあたしを産んでくれた母様。
あたしには大事な親が五人もいる。

それはきっと、とても素敵なことだ。

「…煌姫、ありがとう。当たり前のことにやっと気づけたわ。」

煌姫が顔をそむける。
扇で隠した顔が赤いのを見て、また小萩と目配せして笑い合った。

本当に、ありがとう。

気づかせてくれて。

煌姫、

あなたは本当に……―――


最高の親友だわ……………!










そうと決まればすぐにでも父様に会いたい。煌姫に融への伝言を頼んで帰るのを見送った後、

入れ替わりのように藤宮様から文が届いた。

あたしに面会を望んでいる方がいる、そちらでは都合が悪いから申し訳ないが尼寺まで来てもらてないか

藤宮様からの文にはそんなことが書かれてあった。
先々帝の皇女である藤宮様からのお誘いであれば断ることなどできない。先日訪ねたばかりではあるけれど左大弁様からはあっさりと許可がおり、あたしは一人、藤宮様のいる尼寺に向かった。

「本当なら小萩にも会いたかったのですけれど…」

前回の時、別れ際、藤宮様は今度は小萩も一緒に、とおっしゃってくださっていた。藤宮様は小萩のことも覚えてくださっていたのだ。その上で小萩のことも懐かしんでくださった。今は左大弁家の姫とはいえ、藤宮様は先々帝の第八皇女。今上帝の信頼も篤い大尼君ともなれば、入内予定の深層の姫君といえど藤宮様からの誘いを断ることはできない。故に、左大弁家に藤宮様から正式なお誘いの文を届けてくださるとおっしゃっていたのだが。
それとは違った急ぎの、あたし宛ての文だった。

「あたしに会いたいというのはどなたなのですか?」

今回は会いたいというのは別の方で、藤宮様は仲介を頼まれただけだと言う。

「瑠璃姫の転生の可能性に最初に気が付いてくださった方ですわ。会せてほしいという願いを断れませんでしょう?見つかったことは報告していたのですが。」

「秋篠権…」

「大納言殿です」

この間藤宮様から聞いた、確かに、秋篠権中将…いや大納言様にはお礼を言うべきかもしれない。彼が言いださなければあたしはいまだに、融にも藤宮様も煌姫にも再会できていなかったのだから。
前世ではそれほど面識はなかったように思うけれど鷹男の信頼の篤い公達だった。それ故に、あたしのことも忘れずに探そうとしてくれたのかもしれない。

「そろそろ来る頃ですわ」

そうしてしばらく、

やってきた秋篠権中将様に、


あたしの心は大きく揺さぶられることになる。





続く


イイね!と思ったら押してください<(_ _)>
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

関連記事
雪 says..."ふにゃろば様"
瑠璃の憂いを煌姫が簡単にとっぱらってくれました♪
これで一歩前進、です。内大臣との再会もじきかと。
鷹男の考えについては次話で瑠璃に伝わります…さてさて、瑠璃の反応をお楽しみください。
2018.09.01 13:14 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.08.30 22:48 | | # [編集]

コメントする






管理者にだけ表示を許可する

該当の記事は見つかりませんでした。