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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第五十七話 秋篠権大納言

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藤の大尼君様からの文を主上にお渡しし
平伏したまま主上の反応を待つ。

しんとした室内に主上の文を読む音だけが聞こえる空間は異様な恐怖を煽った。
そう時はかからなかったと思う。
だが、わたしにはひどく長いように思えた。

やがて、

「秋篠権大納言」

御簾の奥に座る主上から声がかけられた。

「はっ……!」

何を言われるのだろうか。
心臓はばくばくと煩く、身体が冷えていく。恐ろしくて顔をあげることなどできなかった。

「藤宮は、この女房を私に会わせたいと、書いてある。」

「………」


「これは、一体、どういうこと、なのだろうね……?」


息がとまる。
確認しなくとも、今、主上がわたしを射抜いていることはわかる…!

「秋篠権大納言、私は、あなたに、なんと、命じた?」

「…に、二度と……藤壺女御様の御名を騙らぬよう、に、と……」

「そう。二度目はない、とは…言わなかった?」

低い冷たい声、
全身に震えが走った。

「お…おっしゃいました!確かに!わたしは!それについてもお伝えしました!一語一句!違えることなく!確かに!!」

「では……これはどういう…ことなのかな?」

「そ、それは……っ」










「長恨歌」第五十七話 秋篠権大納言










「透子様は二度と藤壺女御様とは名乗らぬとお約束くださいました!参内に関しましても、何度も固辞していましたが先々帝のご皇女であられる藤の大尼君様に是非にと乞われては透子様の身分では断れるはずもございません…!主上におかれましては何卒、透子様のお立場もお察しください……っっ」

言った!
言い切った!
大尼君様の依頼をわたしは完遂したのだ!

「…………ずいぶんと、その女房に気をつかうんだね…?」

ひぃぃぃぃいいいいいいっっ!!!

「そそそそんなことは!!めっそうもないことです!」

…今思い出しても恐ろしさに身がすくむ。
恐ろしさにそれ以上一言も発することのできなかったわたしに主上も沈黙されたままで
いたたまれない長い恐怖の時が流れた。あれほど恐ろしい沈黙というのは他にない。いっそ気を失えたらどれほど楽だっただろうか。

「大納言、あなたもか…」

と、主上が呟かれたような気もするがはっきり言って記憶が定かでない。

考えてみよう、とおっしゃられた主上のお姿が御簾の奥から消えて後、
女官に声をかけられてようやく顔をあげ身体が動くようになったわたしに、

主上から透子殿の参内を許すとの旨が伝えられたのは


それから三日後のことだった。










弓削是雄の邸から持ち帰った書物や紙切れを調べさせていた従者から気になるものを見つけたと報告を受けたのは
透子様が左大弁家の二の姫付きの女房として宴に先んじてひっそりと後宮入りしたその日のことだ。

「これは…?」

ぐしゃぐしゃに丸められ投げ捨てるように放置されていた紙片。それさえ持ち帰えらせ、中身を確認させていたのだが、
その中から
都に住む姫君達の名が羅列されていたのだ。

「すでに亡くなられている姫もいるな」

「はい。調べましたところ、ここに書かれてある姫君方は全員が同じ年生まれだとわかりました。」

「なんだと?!」

再度手元の紙片を確認する。十年以上も放置され野風にさらされていた。ぼろぼろになっておりところどころ読みずらい箇所もある。しかしかすれてはいるが、書かれてある文字は読み取れた。
名の上に斜線がひかれ、消したような形になっている姫君の名こそ、早世してしまった姫君だった。

「この姫君達の……年は?」


「十八です」


!!


「つまり………この姫君達は皆、……藤壺女御様が亡くなられた年に誕生した姫君達ということか………」

偶然とは思えない。
藤壺女御様の死と関係があるとしか思えなかった。

何かを探さなくてはと姿を消したという弓削是雄。

もしや…


もしや弓削是雄は……?


浮かんだあまりにおそろしい想像に、戦慄した。
だが実際に藤壺女御様は…
十八年前ではなく十七年前に誕生している…。
わたしの考えすぎか、それとも弓削是雄のよみが外れたのか…?

「…すぐにここに書かれている姫君達を調べろ!現状と、過去少しでもおかしな出来事がなかった詳しく調べるのだ!これは勅命である!!各家が拒否するようならば帝のご命令だと伝えよ!責任はわたしが持つ!!!」

「「「はっっ!」」」

「至急参内する!用意を!」

これは急がなくてならない。
主上にご報告してここに書かれてある姫君達を保護するべきだ。いや、おそらく弓削是雄はすでにこの姫君達を調べた後だ。その上で、“違う”と判断して姿を消した。それでも万が一ということもある。見落としを考えて再び姿を現すこともありえる。
ともかく…

全ては主上にご判断を仰がなくては。

こうなっては藤の大尼君様のおっしゃる通り、主上のお怒りを買ってでも透子様に参内していただいて正解だった。
透子様は藤壺女御様の生まれ変わりだ。主上がいくら否定されようと、間違いない。
弓削是雄が今も生きていて尚も女御様を狙い探しているとしたら―――

弓削是雄がそこまでした藤壺女御様に執着する理由はわからない。

ただ…――


“弓削是雄は藤壺女御様の生まれ変わりを探している”


おそらくわたし達よりもずっと昔から。

もしかしたら、女御様が亡くなれてすぐから――



弓削是雄は藤壺女御様が転生することを信じてその生まれ変わりを探していたのだ―――――。





続く


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雪 says..."ハニーさま"
ありがとうございます!
緊迫した空気を感じていただけて嬉しい!事件の核心にまた近づいた回なのです!

黒幕は、影だけでいまだ姿を現しません。
さていつどうやって登場するでしょうか?!

さっき次話を更新しましたよ!
2018.10.02 00:39 | URL | #- [編集]
雪 says..."ふじ様"
ありがとうございます!
うわ~すっごく嬉しい感想です!
臨場感とせまりくる恐怖感、の、雰囲気がちょっとでも出ていたなら満足です♪
いまだ姿の見えない黒幕…
果たして?!

またまた、感想お待ちしております!!
2018.10.02 00:31 | URL | #- [編集]
雪 says..."ふにゃろば様"
そうか!
「透子殿」って言っておけば秋篠も鷹男に怒られなくてすんだのかwww
無意識って怖いね(笑)!

鷹男と瑠璃の再会はすぐそこまで迫っていますが、一筋縄ではいきません!
再会してから瑠璃だとわかるまでのじれじれを、今後展開していきますよー!
2018.10.02 00:28 | URL | #- [編集]
ハニー says...""
こんにちは。更新をありがとうございます

緊迫した空気がひしひしと伝わってきて
読み終わることには喉がからからに乾いていました。

ふーーーーーー。なんとか一山乗り切った・・・

そのあとの弓削是雄のお話。
予想はしていましたがこのような証拠が出てくると
余計に薄気味悪く感じますね。

次は?次は??
更新が待ち遠しくてたまりません!!
2018.10.01 12:08 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.09.29 01:36 | | # [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.09.29 00:20 | | # [編集]

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