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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第六十七話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)

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拍手御礼小説掲載
「月に一度、藤壺女御様の月命日の日、主上はお姿を隠されます。どこにいらっしゃるのか誰も知りません。探すことも許されません。まして…主上にお会いしようとするなど、殺されても文句は言えない日です。」

あたしが死んだ日…――

鷹男、やっぱりあたしは

あなたをほっておくことなんてできない―――――。










「長恨歌」第六十七話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)










ねえ鷹男。
十八年も経った今でも悲しんでくれているあなたに、あたしは何をしてあげられる?
湧き上がるこの想いを、どう伝えればあなたに届くのだろう。
死んでしまった人間のことなんか忘れて、幸せになってほしいと願うのが本当の愛かもしれないのに、鷹男が今も苦しんでいることに喜びを感じてしまうあたしの想いは、愛ではないのだろうか?

「月に一度、藤壺女御様の月命日の日、主上はお姿を隠されます。どこにいらっしゃるのか誰も知りません。」

ねえ鷹男。
あたしが死んだ日に、あなたはどこに向かうの?

「今月の藤壺女御様の月命日は…三日後です。毎月八日になると、主上はいづこかへお隠れになるのです。」

三日後…
前世のあたしが死んだ日。
八日だったと初めて知った。

「恐らく主上はお一人で藤壺女御様を悼んでおられるのでしょう。」

それはどこで?
どこであなたは、あたしを想ってくれているの?

「探し出すことができたなら…主上とお話することもできるかもしれません。」

御所のどこかではないと思った。
あたしが命を失ったこの場所ではないと、そんな気がした。
ではどこで?
鷹男があたしを思い出すのに望む場所はどこ?
生まれ育ったのは三条の邸だけど、鷹男はあそこへ来たことがない。
吉野では遠すぎる。たった半日で往復するのは無理だ。
初めて出会ったのは五条の邸の床下。けれどあそこは、今では誰も住まないまま時が経ち、荒れ果てていると聞く。
鷹男とは堀川の藤宮様のお邸でも会った。あそこも藤宮様の出家に伴って人手に渡して違う人が住んでいると聞いた。

そういえばあたしの遺体はどこにあるのかと自分で聞くのも複雑な気持ちなのだけど尋ねると、高野山に埋葬されたとのことだった。あたしの遺体は火葬され、骨と遺髪は高野山に埋葬されているのだと。
さすがに高野山も遠すぎる。

「…………あ、」

ならあそこは?
あそこなら御所から行って戻ってくることもできるのではない?!

「法珠寺!!」

そうよ、鷹男と知り合ったばかりのあの頃、女房として忍び込んでいた大海入道の別邸から使者として連れて行かれた寺があるじゃない!
あの寺は鷹男が東宮だった頃に建立したと聞いたしあの頃の観照様はもういないにしてもその意思を継ぐ高名な僧侶があとを継いでいるはず。
大海入道の陰謀で、東宮だった鷹男を廃嫡させるために仕組んだ罠から殺されかけたあたしを鷹男が助けに駆けつけてくれた。当時から東宮だった鷹男が自ら馬を駆って息を切らし、必死にあたしを助けにきてくれた。あの、寺が……―。

行ってみよう、あそこへ。

他に思い浮かぶ場所もない。

「鷹男…待ってて。」

あなたを一人にはしない。










そして三日後…―――

事情を小萩に話してこっそり先に行って待っていようと思ってたのに。
明日はいよいよ宴当日ということで準備の最終確認にとにかく慌しさに追われることになった。何せあたしは今女房なわけで、明日に向けて主人である二の姫…小萩の支度の指揮をとらなきゃいけない。融がつけてくれた弾正尹家の女房達は優秀だけどあたしが唯一の左大弁家からの女房なのでどうするかの指示や最終決定は全てあたしがすることになる。衣装はすでに決まっているけれど他家の姫君とかぶらないようにするための最終偵察の報告を受けたり何かと忙しい。
小萩は小萩で披露する管弦の最終調整もしなくちゃいけないし万が一に備えて用意した歌の最終確認もある。それも女房達に囲まれてがっちり、髪を整えられたり明日ほどこす化粧の確認をされながらだ。
とにかく明日、うちの姫様が一番華やかで美しく見えるように、どの局でも準備に大忙しだった。

特に左大弁家や東宮妃候補の姫君を持つところではそれはもう、戦場といっていい。

いまだお目通りのかなわない東宮様にももしかしたら明日、お目通りがかなうかもしれないという期待もある。
運よく見初めてもらう機会がないとも限らないので、実家の期待を背負った姫君、女房共々準備に手は抜けないのだ。

姫君の準備が終われば次は自分達だ。仕える女房の自分達もまた姫への評価に繋がるので油断はできない。各家が侮られることのないように、これだけできた女房が仕える姫君はどれほど素晴らしい姫君だろうかと思わせるためにも女房であっても姫には及ばずともそれなりの凝った衣装を、自分の外見をよりよく見せてくれるものを身につけなくちゃいけない。女房同士、互いに相談しながらああでもないこうでもないと言い合い、忙しいながらも皆楽し気に準備を進めた。

その全てが終わったのは日が沈む頃で……

「しまった…こんなことしてる場合じゃない!」

何のために後宮へ来たかって鷹男に会うためなのに!目的のための手段に手をとられて目的が疎かになるなんて本末転倒じゃない!
後宮全体が慌しかったから気づかなかったけれど鷹男はもういないのだろうか。今日という日の朝からもう、ここから姿を消していたのだろうか。

「急がなきゃ…」

小萩にはすでに話してあるし二の姫のことは他の女房に任せ、あたしはこっそり、後宮を抜け出した。外には融の用意してくれた牛車が待っていて無言のままそれに乗り込む。融もあたしがこんな時間になるのをわかっていたのだろう、融がつけてくれた護衛にも何も言われることなく牛車は走り出した。

会ったらなんて言おう。

何から話そうか。

もう瑠璃だと名乗らないとかそんなことを律儀に守るつもりはない。
脅されようがなんと言われ様がどんなことをしても信じてもらいたい。
あたししか知らない、鷹男と二人だけの思い出だって語ってみよう。信じてくれるまでいくつでも、覚えてる限りのあの頃の思い出を語ろう。

だって鷹男、

もうあなたに悲しんでほしくない。
苦しんでほしくない。

その必要はないのよ。
あたしは生まれ変わってここにいるんだもの。

あなたの傍にいるんだもの―――!

牛車が走っている間にすっかり日の落ちた外は暗闇に包まれ

静寂の中、

ようやく、

目指す


法珠寺が見えてきた―――――。





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
正解は宝珠寺!!でしたー。
鷹男はちゃんといますのでご安心を(^_^)v
ただ、鷹男の攻略難易度はMWXですよ!

ここは焦らさずに瑠璃語りで二人のやりとりにしてみましたよん。
2018.10.18 19:28 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.10.18 00:01 | | # [編集]

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