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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第七十八話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)

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宴の最中届けられた文。右近少将様からの呼び出しを受けて、あたしは宴を中座して指定された場所へ向かった。
決着を、つけなければいけないと思っていた。
あたしの心は決まっている。本当はもっと早くに、きちんとしておかなくてはいけなかったのに。少将様の強引さを言い訳に後回しにしてきたのは右近少将様が、“内大臣家の瑠璃姫”ではなくただの“近江の受領の娘・透子”に、好きだと言ってくれた人だから。
あたし自身が自分から進んで前世と関わろうと動いておいて勝手だけど、“瑠璃姫”ではなく“透子”に真正面から求婚してくれる彼を、好ましい存在だと思う心がきっぱりとお断りすることを戸惑わせていたのかもしれない。

だけどもう、それも限界。

これ以上右近少将様のお心を惑わせるわけにはいかない。何度断ってもそれでもと申し出てくれる少将様のお気持ちはきっと本気なのだろう。こんな、身分の低い女に熱心に求婚してくださることは、とても有難くて嬉しかった。とうとう最後まで、あたしのどこを気に入ってくれたのか彼自身もわからないままだけど……

それでも“透子”が好きだと言ってくれた彼に、

あたしができる、いやすべきことは、


同じだけの気持ちを返せないことをきちんと、はっきり伝えることなんだわ―――。










「長恨歌」第七十八話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)










「では、何故ですか。わたしは本気なのです。透子殿を大切にするつもりです。あなたを正妻に」

求婚のお返事をしたあたしに、右近少将様は何故と言った。
正妻になりたいわけでもなれるわけでもない。厳しい現実よりも優しい理想を口にする彼はやっぱり若くて好ましいと思う。もしもあたしに瑠璃姫の記憶がなければ。ただの受領の娘だったら。優しくも美しい彼に恋をしたかもしれない。一生独身を通すんだと言っていた昔の瑠璃姫でも、高彬と彼の間で揺れただろう。

「そういうことではないのです」

だけどあたしは違うと首をふった。
そういうことではないのだ。
そんなことが理由では、ないのだ。

昔のあたしは結婚相手に誠実を求めた。浮名を流すような浮気者ではなく一生あたし一人を愛してくれる人と結婚したいと、少女ならではの潔癖さで高彬を選んだ。それが間違っていたわけでもまして高彬が悪かったわけではない。高彬との結婚を後悔しているわけでもない。ただ、

ただ…

大人になれば見えてくるものも、感じるものも変化する。若い頃には見えなかったものがわからなかったものが、わかるようになる。若い頃は理解できなくて納得できなかった、したくもなかった現実の厳しさを、年をとるにつれ受け入れ自分なりの消化ができるようになる。
納得はできなくても理解はできるようになるのだ。現実と理想との違い、そしてそんな厳しい現実の中にいる人への尊敬の念と非難するばかりだった無知で愚かな、未熟だった自分への反省。

それを、人は心の成長と呼ぶのではないだろうか。

瑠璃姫の人生の記憶が、経験が、透子の中にも根付いていて人格にも考えにも影響している。
だから、“今のあたし”は正妻にも誠実にもこだわらない。
大事なのは互いの気持ちと、立場に付随する責任を理解し実行すること。

「…他に想う方が?」

そう聞かれ頭に浮かんだあの人の面影を

「……ごめんなさい。」

今は思い出す時ではないと振り払った。
今はただ、右近少将様を。
この優しい彼だけを見て考えるべき時。
彼を前にして別の人のことを考えるなんてことは、したくないと思った。

右近少将様があたしなんかに本気でいてくださったことを、
お断りして初めて、信じることができた。それほどに、あたしの答えを聞いた彼は辛そうだった……。

俯いて、小さな声で「わかりました」と言って去った後ろ姿を。


あたしはしばらく、切ない想いで見続けた―――――。










これ以上二の姫の傍を離れるわけにはいかないわ…。
少将様を傷つけてしまったやるせなさにしばらく動けずにいたけれど、あまりゆっくりもしていられない。あたしにできるのは少将様にあたしよりずっと素敵な方が見つかることを、少将様だけを見つめてくれる誰かと出逢うことを願うだけだ。

立ち上がり、戸口を開け渡殿に出る。そしてゆっくりと歩きだしたと、同時だった

突然、真横から伸びてきた手に掴まれ引っ張り込まれた―――。

誰、と――。
問うより前にはっと息を飲んだ。
すぐにわかった。
突然あたしを引っ張り込んだその顔に、見覚えがあった。
かろうじて名を呼ばずにすんだのは前世の知り合いに再会するのに慣れていたからかもしれない。

声もかけずいきなりあたしを引っ張り込んだ無作法な公卿、

「僕を知っているの?」

一度愛した人。
結婚までした幼馴染。
童の頃から一緒に育った、優しくて誠実だった

高彬………

「……いいえ。」

「そう。なら、その顔はやめたほうがいいな。とても無礼だからね。」

「っ失礼しました」

つい、その顔を見すぎてしまった。面影は残しつつも彼を纏っていた柔らかで実直そうな空気はもうない。十八年も経っていれば当然なのかもしれない。でも多分、今の高彬は右大臣様によく似てるんじゃないかなと感じた。“今”の右大臣様ではなく、昔の、あたしと高彬が夫婦だった頃の右大臣様。もちろん、直接お会いしたことはないけど、高彬は父親似だと聞いたことがあるから、想像だけどそんな気がした。

「あの…っわたしに何かご用でしょうか」

高彬はあたしの名を聞き、左大弁家の女房であることを確認するとじっと見つめてきた。あたしの方も不躾に見つめてしまった自覚はあるけど、瑠璃だったことを告げる気のない身としては後ろめたさにたじろぐ。
つい今しがた傷つけた右近少将様のことを言われて罪悪感に襲われる。そう言われれば確かに高彬と右近少将様は叔父と甥の関係。甥を振った女に文句を言いにくるほど親しく付き合っているのだろうか。ならあたしもきとんと答えなきゃと、少し考えて正直に返事をした。

「不足なのは右近少将様ではなくわたしの気持ちです。右近少将様と同じ気持ちをお返しすることができないからお断りしました。」

それをどう受け取ったのか、高彬の表情が変わった。
怒り、悲しみ、絶望、憎しみ…――

「僕じゃ駄目かな?」

言葉とは裏腹に高彬から感じる負の感情。
どうして!?
高彬?
あたしは突然の高彬の変貌にただただ驚き、たじろぐ。
そんなに右近少将様にお断りしたことを怒っているの?でもならどうして、

「ねえ、僕にしときなよ。」

そんなことを言うの?

じりじりと近づいてくる高彬から逃げたくて
後退しながらも高彬を見つめた。
甘い言葉と裏腹な負の感情。顔は微笑んでいるのにそこから感じるのは好意とはほど遠い。

「僕は中納言だ。言っている意味…わかるよね?」

やめて。
やめて高彬!!
あの頃の美しい思い出を壊さないで!!

瑠璃姫だったあたしを癒して救ってくれた優しいあなたの、
あたしにくれた求婚の言葉を。


お願いだからそんな風に汚さないで……っ!


心の中で叫んで懇願する声は当然高彬には届かない。

「僕のものになりなよ。」

強引に押し倒され
歪んだ笑みを浮かべる高彬にぞっとした。

「……て、………っやめて…くださいっっ!」

「さっき言ったよね。僕は、中納言だと。」

脅しの言葉を口にする高彬をきっと睨んだ。

「だから黙ってされるがままになれと?そんなの絶対に嫌です!」

ぐ…っと、
掴まれた腕に力が込められた。
苦痛に顔が歪んだけど高彬を睨みあげるのはやめなかった。

「この僕に逆らうなんて気の強い女房だね」

「女房だからって…見下される謂れはありません!」

「ますます欲しくなったな」

高彬が嗤う。

「あたしは嫌です!!」

「本当に中務少輔には勿体無いよ。」

何を言ってるの?!

「僕の女になればどんな贅沢も思いのままだ。女房勤めなんか辞めて悠々自適な女主人の生活を送らせてあげるよ。」

「そんなのいりませんっ!」

「わかっていないようだね。君に選択権はないんだよ。それとも……里の両親を路頭に迷わせたい?左大弁家の没落の方が嬉しいかな?君の二の姫は東宮妃どころじゃなくなるよ。」

「何を……」

何を言うの?
どうして?
何でそんなことを?

本当にあなたは、あたしの知ってる高彬なの?

高彬が嗤う。

「中納言の僕にはそれだけの力があるんだよ。大丈夫、君が僕のものになりさえすれば里の両親も左大弁家も安泰だよ。」

「………卑怯者」

変わってしまった。
高彬はこんな人じゃなかった。
十八年という歳月はここまで残酷に人を変えてしまうのだろうか。
悔しさに涙が滲みそうになったけど、涙なんて見せなくなくてぐっと堪えた。

「あなたは…権力で脅して女をものにするような人だったのですか」

「ッッ煩い!!!」

鈍い音が響く。
頬を叩かれたのだ。

あまりのことに呆然と高彬を見上げれば怒りで顔を真っ赤にした高彬。
叩かれた頬はじんじんと痛みやがて熱を持ち始める。男の人の、加減しないいっぱいの力で叩かれたのだ。じきに腫れ上がるかもしれない。

高彬の瞳が暗い。

「君が悪いんだよ。この僕に生意気な口を聞くから。これ以上痛い思いをしたくなかったら僕を怒らせるな」

周囲を見渡す。
何か、何か反撃に使える物がないか。この掴まれた手に、届く何かはないか。
視線を彷徨わせ懸命に探った。反撃の糸口になるものを。

――駄目だ、何も、ない……


「………っ誰かッッ!!!誰か助けてーーーーー!!!!!」


代わりにあたしは腹の底から声を張り上げ叫んだ。力いっぱいの大声で助けを求めた。
醜聞になってもいい。
これで後ろ指をさされるのがあたしの方になってもかまわない。
近江の両親も左大弁家も大丈夫だ。融が守ってくれるはず。藤宮様だって父様だって助けてくれる。
あの時とは違う!ただの女房のあたしに失うものはないんだから!

だから、だから今は

なんとしてもこの状況から逃れなくちゃ……!!

「誰か…っきてぇー--っっ!!!」

「くっ…煩い!黙れって言ってるだろうっっ!!!」

また頬を叩かれた。
今度はさっきよりも鋭い痛みが走って目の奥に光が舞った。

髪をひっぱりあげられ、さらにもう一発。
口の中に苦い味が広がる。血が出たのだとわかる。

「顔なんてどうでもいいんだ。大人しくしないのなら今度は拳で殴るよ。」

今は宴の真っ最中。あたしの声は誰にも届かない。
届いたとしても相手を知れば助けてはもらえないかもしれない。事情を知る融か秋篠権中納言様じゃなきゃ、誰か来てくれたとしても見てみぬふりされるかもしれない――

嫌だ。

嫌だ。
こんなのは、嫌。

「…特別に僕の名を呼ぶ権利をあげるよ。高彬って、呼んでごらん。さあ――」

その時だった。

固く閉ざされていた戸が開き
光が差し込む――



「――――――――――何をしている」



だ…れ……?

「右近中納言。ここで何をしている」


「あ……嘘、だ………主上…?」


何でここに…と。
高彬が掠れた声で呆然と呟いた。

鷹男……?

「去れ」

「で、ですが」


「聞こえないのか。今すぐ去れと言っている右近中納言!!!」


「は、はいっっ」

見間違い、だろうか?
あたしの願望が見せている幻覚だろうか?

だって…

だってそうじゃなきゃあるはずがない。

鷹男が、鷹男があたしを助けに来てくれるなんてそんなこと―――

「たか…」

我慢していた涙が一筋だけ、


熱い頬をつたっていった―――。





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
かっとなると手がでちゃうのが高彬って思ってます(゜o゜)
それに加えて18年分のひねくれが彼を嫌な奴にしちゃってる…
という設定の、作者都合(笑)
今回ほとんど出番のない役どころですので彼への仕返しはふにゃろば様にお任せしようかしら^m^
2018.11.19 10:12 | URL | #- [編集]
雪 says..."ハニー様"
久しぶりに高彬を悪く書いちゃいました(>_<)
嫌な奴になっちゃってるけどもとは卑屈さからこうなってるというか…
高彬の場合(私の考えでは)、周りにいる人間の影響次第で黒にも白にもなれるというか、今回彼には彼を白でいさせ続けてくれる人間がいないのでこうなったのかなと考えています。

ありがとうございます。
ラストをどうするかで悩んでいるのもありますが、単純に創作意欲の低下ですね…。でも完結はしたい!だからって打ち切りみたいなラストも嫌(^_^;)

う~創作の神様を誰か連れ戻してくださいませ!!
2018.11.19 10:09 | URL | #- [編集]
ふにゃろば says..."ありがとうございますっ!m(_ _)m"
雪様、こんばんは。

そして。ハニー様、はる様、蘭様、
ご感想ありがとうございますっ!(≧▽≦)
いや~、非公開の時は読むのは雪様だけだったので
良かった(?)のですが。
公開コメは、不特定多数の方々の目に触れるので
不快に思われる方もおられるかなと
ビクビクものだったのですが(^_^;)。
幸いにも、皆様やり過ごして下さっているようで
(ですよね?)、胸を撫で下ろしている
ふにゃろばであります。
(その割には、好き勝手に書いているんだよなぁ…)

高彬…。もう、怒る気にもなりゃしません(-_-;)
言葉で脅すだけならまだしも、手まであげるなんてっ!
ハニー様が仰る通り、ゲス男になり下がっちゃった
んですねえ…。

さて。ここからは恒例(?)の妄想ですが。
高彬がかなりいじましく、セコくなっております。
高彬ファンの方は不快に思われるかもしれません。
「そんな高彬も、一興♪」と思って下さる
心の広ぉーい方のみ、先へお進み下さいm(_ _)m

******************************

宴の裏の秘密会議の後。「考えてみよう」と言った手前
二の姫がいる辺りに近づいてみる鷹男。
すると、透子(=瑠璃)が出て来たので
思わず後をつけ、右近少将との会話も漏れ聞いてしまう。
透子が宴に戻ろうとしたので、自分もその場を離れようと
したら、部屋に引っ張り込まれる透子を発見!
再び様子を伺っていると、鈍い音の後に悲鳴が聞こえてきたので
入室する鷹男。状況を一目見て、高彬が無理強いしているのは
判ったので、とっとと追い出した後、黙って透子を見下ろす。
一方の透子は涙を溢した後、慌てて頭を下げる。
その後、鷹男は背を向けて立ち去ろうとするが
頭を下げていた透子は、その事に気付かない。
(以下、地の文では「透子」は「瑠璃」で表記します)
鷹:「…、何をしている」
瑠:「(声を掛けられたので、頭を上げる)え?」
鷹:「このような人気のない所におれば、どうなるか
   まだ判らぬのか?」
瑠:「あっ、いえっ」
鷹:「ならば、さっさと参れ(と言った後、この場を離れる)」
瑠:「(殴られたショックで動転しているが、
    取り敢えず大人しく鷹男の後をついていく)」
その後二人は、高野山での調査の事で打ち合わせをしていた
融と守弥に出会い。
鷹:「…、弾正尹」
融:「主上?(後ろの瑠璃に気付いて、思わず息を吞む)」
守:「る、透子殿っ!? その顔はっ」
鷹:「…、右近中納言に無体を働かれ、抵抗して殴られたのだ」
融:「っ! 高彬がっ!?」
守:「中納言様が、ですかっ!?」
鷹:「その顔では、宴には戻れまい。退出を許す。
   二の姫には、そなたから伝えるが良い。
   (と言って、去っていく)」
瑠:「(その背に向かって)あ、あのっ! 助けて下さって、
   ありがとうございましたっ」
融:「(鷹男が立ち去った後)姉さんっ、その顔は
   本当に高彬がっ!?」
瑠:「え…、う、ん」
守:「中納言様が、どうして…」
融:「とにかくっ、手当が先だ! 姉さん、こっちへっ!
   ああ、守弥。悪いけど、二の姫にこの事を伝えておいて
   くれるかい?」
守:「は、承りました」
そして、融は盛子さんに瑠璃の手当を任せ、
二の姫への報告を済ませた守弥と落ち合う。
守:「弾正尹様」
融:「高彬に会う。止めても無駄だからね」
守:「…、私もお供させて下さい」
融:「守弥?」
守:「私自身で、確認したいのです。私がお育てした『若君』は
   女人に乱暴を働くような方ではありませんでした」
融:「…、で? 『確認』した後、どうするつもり?」
守:「本当に『そう』なら…、高彬様は変わってしまわれた。
   主の愚行を正すのも、『元』守役の務めかと」
融:「その覚悟なら、結構だ。一緒においでよ」
一方、高彬は。
「どうしよう…。主上にあんなところを見られるなんてっ!
 で、でも、僕は悪くないさ。そうさっ、あの女が悪いんだ。
 たかが、女房の分際で中納言の僕に逆らうから。
 その生意気さに相応しい罰を下しただけなんだよ。
 あんなんじゃ、この後宮でこの先やっていけやしない。
 そうだよ、僕はあの女房を躾てやったんだ。
 感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いなんてない。
 主上だって、ちゃんと話せば判って下さるさ。
 女房風情と僕とじゃ、宮中での重みが違うんだから」
と、自己弁護の真っ最中。そこへ、融と守弥が登場!
融:「…、高彬」
高:「っ! やぁ、これは今をときめく弾正尹殿じゃないか。
   昔の幼馴染の名前なんて、とっくに忘れたと思ってたよ。
   覚えていて頂いて、光栄と言うべきかな? それに、
   その後ろに控えているのは、何処かで見たような顔だね?」
融:「そうだな、忘れていたよ。お前に殴られた女房を
   見るまではね」
高:「(動揺するが、虚勢を張って)あぁ、会ったのか」
守:「中納言様、本当に透子殿を?」
高:「殴ったよ。それが、どうかしたかい?」
融・守:「「っ!」」
高:「何だよ、たかが女房じゃないか。大怪我だな」
融:「高彬。彼女の主は僕が後見している。
   それを知ってのことなのか?」
高:「知ってるさ。だけど、姫自身じゃないだろ?」
守:「中納言様…、どうなされたのです」
高:「随分と偉そうな口をきくじゃないか、中務少輔?
   弾正尹の威勢を借りて、勘違いしてるんじゃないか?」
融:「高彬。彼女はいづれ僕の養女にしようと思っている。
   お前は、そんな女人に手をあげたんだぞ?」
高:「(嘲るように)へぇ…。それは又、入れ込んだものだな。
   やっぱり、あの声かい?」
融:「声、だって?」
高:「今更、とぼけるなよ。あの声、瑠璃さんにソックリ
   じゃないか。たかが声だけで、そこまで肩入れする
   とはね。お前のシスコンは死ぬまで治らないようだなっ」
守:「中納言様っ! 言葉が過ぎますっ」
高:「黙れっ! お前みたいな裏切り者に、指図される
   いわれはないっ」
融:「裏切り者、だって?」
高:「そうさっ! コイツはあの女房に求婚してるんだよ」
融:「…。それが、どうして裏切り者なのさ」
高:「甥からその事を聞いた時、守弥の所に訪ねて
   行ったんだよ。その時、コイツは彼女の事を
   僕に何も話さなかったんだ。声が瑠璃さんにソックリ
   だってね。そんな事を話せば、僕が興味を持つとでも
   考えたんだろう。それだけでも、僕に対する
   立派な裏切りじゃないか」
融:「『だけ』ってことは、他にもあるのか?」
高:「守弥があの女に求婚したのも、あの声に惹かれたからさ。
   つまり、お前は瑠璃さんに懸想していたんだろう?
   気付いた時には、自分の愚かさに嗤えたよ。よりにも
   よってお前みたいな朴念仁が、主の妻を想って
   いたなんてね!」
守:「…、瑠璃姫への事は、否定致しません。ですが、
   中納言様を裏切るような真似などっ」
高:「よく言うよ。僕を見限って、さっさと右大臣家を
   辞めたくせに」
融:「そんなの、当たり前だろ」
高:「…、何だって?」
融:「お前だって、本当は判ってるんじゃないのか? お前も
   含めて、右大臣家は徐々に衰退してるんだって事は。
   お前達がまだ宮中に居場所があるのはお前の父親の
   威光と、何より東宮様のご生母の承香殿女御様が
   お身内であられるからだ。少なくとも、お前の兄達は
   と思っていたけど。どうやら、お前もそうらしいな」
高:「フン…。お前こそ、主上のお気に入りでいられるのは
   瑠璃さんの弟だからじゃないか。偉そうに僕の事を
   言えた立場なのか? 大体、主上もどうかして
   おられるよ。十八年も前に亡くなった女御に
   未だ未練タラタラなんてさっ! 流石に物の怪憑き
   と言われた瑠璃さんだけあるよな」
融:「高彬…。お前、自分が何を言ったか判っているのか?
   姉さんだけじゃなく、主上まで愚弄したんだぞ」
高:「っ!(言われて初めて、自分の失言に気付く)」
融:「お前がそのつもりなら、僕にも考えがある。姉さんを
   悪く言った奴らがどうなったのかは、お前も知っている
   だろう?」
高:「…。どうやって、証明する気だい?
   僕が言ったって事をさ」
守:「恐れながら、私が証言させて頂きます」
高:「お前っ、僕の失脚に加担するつもりかっ!?」
融:「お前が自分で言ったんだろ? 守弥を『裏切り者』って。
   それに『失脚する』事が判っているなら、話は早い。
   身辺整理をしておくんだな」
高:「おいっ、融っ!」
融:「さよなら、高彬。もう、幼馴染として会うことは
   ないだろう」
慌てふためく高彬を尻目に、去って行く二人。
その後、高彬は(守弥のとりなしによって)
官位こそそのままだったけれど、融の部下として
地方の巡察の役目を与えられ、数年もしくは十数年
都に戻れなくなったのでした♪

…、人様のお話をここまで勝手にいじくって
いいのでしょーか(-_-;)
2018.11.17 03:20 | URL | #- [編集]
ハニー says...""
更新ありがとうございます!

素晴らしい!
素晴らしいゲスッぷりですよ、雪様!
「顔なんてどうでもいい」
「高彬って、呼んでごらん」
ってのがまぁ、瑠璃姫への想いが残ってるんだなと
感じられはしたけれど
カッとなると暴力に訴えたりするところなんかは
本当に高彬らしくて、良い仕上がりになりましたね。

そして…
ふふふ。満を辞して鷹男の登場!!
やったー!!ふぅ〜ーっ!!
王道ですが、やはりこれでなくっちゃ!

きっとこの後、鷹男は瑠璃姫を抱きしめて
瑠璃姫は安心感と疲労から気を失って
気付いたら藤宮様や融に囲まれている中で
寝かせられていた、という感じでしょうか。

もちろん、高彬はこのまま済ませれることはなく
藤宮様や融の怒りは凄まじく、瑠璃姫には内緒で
重い処分が下されるのかと。

雪様、お話、苦しんでられますか?
ごゆっくりで構いませんので納得のいく創作を
続いて下さいね。
2018.11.13 06:46 | URL | #- [編集]

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