FC2ブログ

沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第八十話 左大弁家二の姫・柊花(小萩)

  8 

現在拍手小説はありません
「東宮様のお出ましにございます」

此度の宴の主催者は東宮様となっており、わたくしも東宮様のお招きで参内したことになっております。また東宮妃候補が集められていることも周知の事実であり、今世では左大弁家の二の姫であるわたくしが恐れ多くもその候補となっていることも…当然、東宮様がご存知でないはずがなく。

「左大弁家の二の姫。よくぞ参られた。宴は楽しんでいますか。」

「…はい。此度はこのような席にお招きいただきましてありがとうございます。」

このように、東宮様が新たな東宮妃候補の姫一人一人とお会いになる内の一人になることもまた、当然の流れでございました。










「長恨歌」第八十話 左大弁家二の姫・柊花(小萩)










大勢の女官と女房達に囲まれ、几帳だけを隔てて対面した東宮様は
お顔を凝視することなどできませんがそれでも几帳と扇の隙間から垣間見る限り、今上の帝とは似ていないように思いました。ご生母の承香殿女御様に似ておいでであるとは、以前の生の時からお聞きしていましたが。やはり融様に言った通り、昔に遠目に何度かお見かけした幼いお姿に重なることはなく
東宮様は今の東宮様として見ることができそうでございます。

わたくしの女房達から思わず感嘆の溜息がでてしまうほど、麗しい青年にご成長あそばしておりました。

「あなたには初めての宴でしょう。いかがですか」

「はい…とても華やかで、圧倒されております」

本当は、以前の生で幾度も経験しているのですが。二の姫としては初めての参加であることに間違いはありません。
東宮様は目を細めておっしゃいました。

「昔はもっと大規模に行われていたようなのですがね」

「…そうでございますか」

どうだったでしょうか。あまり、違いはわかりませんけれど。まあ、瑠璃姫様はあの通り、宴を好む方ではありませんから…いつも何とか、逃げようと画策しておりましたし。わたくしはそれを阻止するのにいっぱいっぱいでしたっけ。

「二の姫」

「は、はいっ」

つい昔の思い出に浸ってしまいました。東宮様がわたくしを見ていることに気づくのが遅れ、慌てて返事を返します。
まるでわたくしという人間を探ろうとしているような東宮様の眼差し。一瞬、どきりとしたものの、すぐに柔らかく微笑まれました。

「あなたは緊張していないようですね。他の姫君達は…話しかけてもあまり返事を返してはくださらなかったのですが」

「そ、そんなことは…っございませんが……」

これでも充分、緊張はしているのですが。それはまあ、全くの初対面の普通の姫君方と比べれば、反応が違ってしまうのも無理はありませんわ。前世の記憶持ちの、心の年齢でいえば東宮様のお母君と同じくらいなのですもの。

「きっと……東宮様があまりにもお美しいので皆様、言葉を失われてしまったのでございますわ」

ですから本心からそんなことを言ってしまいました。
主上が男らしい華やかなお美しさであるならば、東宮様は性別を感じさせない妖しいお美しさであるように思えます。昔の無垢でお可愛らしい童姿の東宮様がこんな風に成長なさるとは、感慨深くなってしまいます。

東宮様は扇を広げられ、その奥でくすりと笑うと悪戯な流し目をされました。
これにはさすがのわたくしも、赤面して扇で顔を隠しました。

こういうところは主上の血なのかしら…。
瑠璃姫様の前での主上とよく似ていらっしゃいますわ。

「褒め言葉と受け取っていいのかな。ですがわたしの妃には意思の疎通ができる方でなくては。見た目の容貌を気にすることほど無意味で愚かなことはない。」

「――…え?」

「そうは思いませんか?」

「はあ……」

どうお答えしていいか、言葉に詰まりました。
それはまあ、大事なのは中身ですけれど、容姿もそれなりに大事といいますか……整っている方の方が好ましいといいますか…いえ、美しいからといって不誠実な殿方はごめんなのですけれど。
東宮様からそんなお言葉が出るとは思わず、驚きに目を瞬かせました。充分にお美しい東宮様からそのようにおっしゃられても納得いかないようなおかしな心持ちです。

「では…東宮様は女も見目より心栄えだと?」

正直、詭弁だと思うのですけれど。
女もそうですけれど殿方は特にその傾向が強いと思うのはわたくしの思い込みでしょうか?

「もちろんですよ。わたしの見目だけを見て中身を見てくださらない方など遠慮したいですね。」

「………」

これは、牽制でしょうか?
今世の父の思惑とは違い東宮様は梨壷女御様以外の妃を迎える気はないという、遠まわしな牽制なのでしょうか?
他の姫君方も今のようなことを言われたのだとしたら、きっと入内は諦めるでしょう。
わたくしも特別入内したいわけではないのですが、瑠璃姫様が再び主上の後宮に入られるなら、お供するためには都合がいいくらいの気持ちはあります。

…少し、
思うところがあり。

わたくしは心の年長者として、恐れ多いことながら東宮様に助言めいた返事を返しました。

「恐れながら、」

几帳と扇に遮られた向こうで、
東宮様の瞳が鋭くこちらを射抜いているのを感じました。

「中身を見てもらうには、自分がまず相手を見て、そして自分からさらけ出さなければ無理ですわ。最初から全てを見抜ける人間などいるはずがございません。最初は見目から入るのもまた…順序としては当然の流れかと。」

まだお若い東宮様ですから葛藤があるのかもしれません。誰しも、結婚には多少なりとも夢を見るものですし幸せになりたい、愛し愛されたいと望むものです。身分や地位や外見ではなく、自分自身を見てほしいと…願うのも当たり前です。東宮様におかれましては尊きご身分で見目麗しいお方ですから、人が自分自身ではなく上辺のものに惹かれて寄ってくると、嫌悪する気持ちが沸くのでございましょう。
ですがその相手もまた同じ人なのです。他の人がそうだったからといって、皆が皆同じわけでもなく。自分が望むのなら相手も同じことを望んでいるかもしれないのです。中身を見て好きになってほしいと願うなら、相手のことも決めつけず中身を見る努力をしなくては。

「愛とは……互いの努力で育むものとわたくしは考えます。どちらか一方の努力だけでは育ちません。」

東宮様に不敬かもしれませんが、上辺だけではない愛を望まれるのなら、東宮様ご自身も愛する努力をしなくては。

ここでようやく、わたくしははっと我に返りました。

言い過ぎましたわ…。
内心の焦りを極力表に出さぬようにしながら周囲を見渡せば、案の定、わたくしの女房達は真っ青で、東宮様付きの女官達は唖然としております。
わたくしったら…東宮様になんてことを…っ!!
恐れ多くも東宮様に意見するなんて!たかだが中流貴族の娘如きがなんという不敬!

「もっ…申し訳ございません……!わたくしとしたことが東宮様になんということを…っっ」

もうもう、わたくしも血の気が引く思いでした。間違いなく顔色も青くなっていたことでしょう。
慌てて平伏し、東宮様に許しを乞います。

こんなことで後見を申し出てくださった融様にも左大弁家の父にも迷惑をかけてしまったらわたくしは…!

重く長い沈黙が続いた後、

東宮様の静かなお声が響きました。

「あなたは確か……まだ十五だったね」

「そ、そうでございます………」

あああああ申し訳ありません!
東宮様を騙しているわけではないのですが正真正銘の十五ですけれど心はとうに三十路を超えた中年女性なのです…っ!
年を取るとお節介になると聞いたことはありましたけれどまさに!
年長者ぶって東宮様に助言しようなどおこがましいことを……っ

ぱちり、と
扇を閉じる音がして。

東宮様からの視線を感じながらわたくしは平伏を続けます。

「なるほど……叔母宮のおっしゃる通りだ。あなたは大変に大人びた方らしい。」

「めっそうも………」

これも遠まわしな叱責でしょうか。
伏せた視界の端でついてきた女房達が今にも倒れんばかりに震えているのが写りました。

「弾正尹があなたについたのもあなたのその内面を見込んでのことなのかもしれないね。」

もうもう、なんと返せばいいのか。
何をお答えしても不敬でお怒りを買う気しかしなくて。


「左大弁家の二の姫、……………――覚えておこう。」


平伏し続ける向こう側、

立ち上がった東宮様が


感情の窺えないお声でおっしゃったのでした―――。





続く


イイね!と思ったら押してください<(_ _)>
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

関連記事
雪 says..."ふにゃろば様"
ふふふ(*^_^*)
そこのところ、これから書いていくところですけど…
皆様の推測がふくらんでいるので大変そう(笑)
どうしようかな~
2018.12.02 17:48 | URL | #- [編集]
雪 says..."なつき様"
ありがとうございます!

おお!他の方々とはまた違った視点からの想像ですね!!
ああ、迷います、いいですね!こういう展開もいいですね!東宮についてはまだ考えている展開を形にできていないので、どうにも変更はききますし(笑)
そうなんですよねー、小萩にも幸せになってほしいから、そこを考えての展開にしないとなんですよね~。どうしようかな~。
2018.12.02 17:46 | URL | #- [編集]
雪 says..."几帳さま"
予約日時の設定ミスでした(>_<)
すみません!
2018.12.02 17:43 | URL | #- [編集]
雪 says..."NONKO様"
こちらこそ、感想をありがとうございます!
更新ペースがゆっくりになりつつあるのに見捨てず、暖かいお言葉、嬉しいです。

来年の女御際も無事盛況となりますよう、どうぞ応援してくださいね!
チャットでお話できること、コメントでお名前をお見かけできるのを楽しみにしています♪
2018.12.02 17:42 | URL | #- [編集]
ふにゃろば says..."さて、どっち?"
雪様、こんばんは。

NONKO様に、私も同感なのですが。
だとすると、高彬が透子(=瑠璃)を殴ったから
東宮とは会わずに済んだということになりますね。
(ま、だからといって高彬のしたことを
 グッジョブなどとは全く考えていませんが)

小萩さん、そんなに恐縮しなくてもいいと思いますよ。
もしも東宮=ヤツなら、小萩を瑠璃と勘違いするかもしれないし。
東宮本人なら、鷹男の息子なんだから小萩に言われたことを
素直に考えこそすれ、不愉快とは感じないでしょう。
それこそ、なつき様の仰るように
「東宮であるわたしに対して、あれほど歯に衣着せぬ物言いを
 する姫は初めてだ。皆、わたしに媚びるか諂うかして
 何とか関心を得ようとするだけなのに。少なくとも彼女は
 わたしを『東宮』としてではなく、一人の男として見て
 くれているのかも知れない。ならば、あの姫こそが父帝様に
 とっての藤壺女御様の如く、わたしの生涯の伴侶と
 なり得るのではっ!?」
なんて、想いを馳せちゃったりして♪
2018.11.26 23:28 | URL | #- [編集]
なつき says..."小萩ちゃんも幸せになってほしい♪"
こんばんは!
毎回更新を楽しみにしています。

みなさまのコメントを見ていると、ついつい妄想してみたくなりました。

・・・・・・・・・・・


右大臣家は東宮様を傀儡にしようとしているけど、東宮様はそれがとても正しい事とは思えない。でも、それに抗する力も、周りの助けもなくて、当たり障りなく暮らしていても、人間不信になっている状態。
もちろん、梨壺の女御様ともうまくいくはずなく、ボッチ感半端なし!

そこに、ヒーロー小萩ちゃん登場。
この姫なら人生の伴侶に!ってピンときた小萩ちゃんに触発され、鷹男親衛隊とともに悪の根源、右大臣家を撃退する。
そして、相思相愛となった東宮様と小萩ちゃんが幸せになる・・・

もちろん、鷹男と瑠璃ちゃんも幸せになって欲しいけど、一緒に小萩ちゃんも幸せになってほしい♪って思うストーリーでした

チャンチャン♪

大変、失礼しました。
2018.11.26 20:06 | URL | #h4A29jX6 [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.11.23 23:05 | | # [編集]
NONKO says..."やはり、この東宮って・・・"
お忙しい中更新ありがとうございます。
やはり、この東宮は例の奴って読みはあたりそうだなと、
私の予想に同意してくれる方々もいてうれしいです。
皆様の予想小話も毎回楽しみにしています。
来年のお祭りも楽しみです♪
2018.11.23 15:06 | URL | #- [編集]

コメントする






管理者にだけ表示を許可する

該当の記事は見つかりませんでした。