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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第八十四話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)

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それはともすれば見落としてしまうほどの小さな笑みだった。
ほんの少し口角があがっただけの、くすりと笑んだだけの、微笑みとも呼べない笑み。
次の瞬間にはもう笑ってなどいない無表情の鷹男に戻っていたくらいの一瞬だけの笑みだったけど

とくん…と。

胸が高鳴って。
その一瞬で心を奪われるくらいの威力があった。
普段無表情の人の笑顔ってこんなに破壊力があるんだとどうでもいいことを考えた。

昔の鷹男はよく笑っていた。
その笑顔を奪ってしまったのは

あたしなのね―――……?










「長恨歌」第八十四話 左大弁家二の姫付女房・透子(瑠璃)










「そなたの望みは何だ?」

「え…?」

一瞬で笑みを消した鷹男があたしを見つめている。
咄嗟に聞かれて何のことかわからなくてすぐに聞き返した。

「の、望み…?ですか?…右近中納言様にやり返したい?」

「そうではない」

直前までしていた話が高彬のことだったからてっきりそのことかと思ったんだけど
どうやら違うらしい。

「そのことではない。そなたが私に望むことだ。女御の名を騙りここに来た目的だ。」

「………」

藤宮様はああおっしゃっていたけれど、やっぱり鷹男はまだあたしを信じていない。
唇を噛み締めて俯きそうになるのを我慢してじっと鷹男を見つめ返した。

考える。
あたしがここにいる理由と、目的。
鷹男に会いたかった。一目でもいいから会いたかった。それが目的なら、もう果たされてる。
瑠璃だと信じてほしいとまで願ったのは欲だ。融や藤宮様が信じてくれたから欲を出してしまったんだ。元々は瑠璃だと名乗るつもりはなかったのに。けど、表情を失ってしまった鷹男をほっておけなくて。自分のせいだと思うから余計になんとかしたくて。
だけどそれは後からできた理由。

じゃあ、あたしが望んでたことって……?

「姫宮に………会いたい」

そう。
鷹男には会えた、会話もすることができた。信じてはもらえていないけど、会えた。
でも
姫宮には会えていない。

「余計なことは言いません……母親だなんて名乗らない…会って…少しの会話をするだけでもいい…姫宮に、会いたい……」

あたしの娘。
一度も抱くことのできなかった娘。
産みの苦しみも、産んだ喜びも覚えていないひどい母親だけど。
赤子のあなたの産声は、産まれたてのあなたの匂いは、顔は、温もりは
もう知ることは叶わないけど。
せめて今のあなたを
あたしの娘のあなたの今を
知りたい、見たい、会いたいの…

小萩は言っていたわ。あたしによく似てるって。融は言ってたわ。気品があって皇女然としてるって。
でもそれだけじゃ全然想像つかないの。
会いたいの。
あなたの顔を見たいの。声を聴きたいの。

抱きしめることは…許されないけれど。

「………会ってどうする。その後は。」

「今の人生を精一杯生きるだけです。あたしが傷つけてしまった大切な人達に笑顔を取り戻してほしいけど…そこにもう一度あたしの居場所がほしいとまで望んでるわけじゃない…それは、さすがに高望みしすぎだってわかってますから。」

「…藤宮らがそなたを手放すとは思えぬが」

ゆるゆると首をふる。

「藤宮様達が望んでくださるならいつでも会えます。今のあたしは透子、それでいいんです。」

「私の女御にはなりたくないと?」

鷹男を見つめる。
どうしてそんなことを聞くの?

そんなつもりなんて、ないくせに。

ああ、またあたしを試してる?
そうやってあたしが食いついてくるかどうかを試してるの?

「あたしはあたしが幸せになれる道を選びます。せっかく生まれ変わったんだもの!…帝も、せっかく生きてるんだから幸せにならないでどうするんですか。幸せに、生きてください。」

例えそこにあたしがいなくても。
隣に、あたしの居場所がないとしても。

鷹男、

あなたの幸せを願う心に嘘はない。

どうかそれだけは。

信じてほしい…――。

「………“せっかく生きてるんだから“……?」

「はい。せっかく生きてるんだから、幸せにならないと勿体無いですから。」

「……“せっかく生きてるんだから幸せにならなくてどうする”…………………」

「あたしはどこででも幸せに生きていけます。帝と姫宮様がお幸せなら、あたしは左大弁家でも、近江に戻ってもかまいません。いえ、むしろ…戻りたい」

「近江に…?」

「はい」

だってここにいたら。
京にいたら恋しくなってしまうもの。
今以上を望んでしまいそうだもの。
それなら遠く離れてた方がいい。諦めがつくから。
また近江で、今の身の丈に合った生活を送る方が幸せかもしれない。

無理に笑ったあたしを

鷹男はじっと


見つめていた―――――。





続く


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雪 says..."めい様"
お返事が遅くなり申し訳ありません。
今更ですがあけましておめでとうございます、今年も仲良くしてくださいね(*^_^*)

最近更新が減っているのは…スランプだからですううううううう
創作の神様がいづこかへいってしまいまして……なかなかかけないんです。ストックを切り崩しつつ乗り切ってたのですがそのストックももう切れますし、展開的にも終焉でまとめていかないといけないところで、
続きが書けず。。

のんびり待っていただければと思います。すみません!
2019.01.29 23:45 | URL | #- [編集]
雪 says..."ふにゃろば様"
今回高彬がダメンズすぎて散々ですね…(笑)
高彬への仕返しはちょこっとしかふれないつもりなのでその時はその分、ふにゃろば様の妄想劇で皆様には満足してもらおうかなwww
というかもう、高彬に未来はないし仕返しといっても何をしていいやら(^_^;)
2019.01.29 23:41 | URL | #- [編集]
雪 says..."蘭さま"
遅くなりましたが、感想ありがとうございます。
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いしますね♪

長編になりすぎて更新が止まりつつある連載…
鷹男サイドのお話は物語のラストにがいいかなと思っています。
終焉に向けていろいろとまとめていかなくてはならない展開で続きを書くのが難しくなってきております…!!
2019.01.29 23:38 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.12.29 17:31 | | # [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.12.29 16:45 | | # [編集]
ふにゃろば says..."ギャーッ!"
雪様、こんばんは。

今、自分のコメを読み返してみたのですが…。瑠璃の「『クズ』でのろまで〜」の台詞は、「『グズ』で〜」の間違いですっ! 読まれた皆様、どーか脳内変換をお願い致しますm(_ _)m
2018.12.23 00:49 | URL | #- [編集]
ふにゃろば says..."あぁ、長い…(-_-;)"
雪様、こんばんは。

うーん、そろそろ鷹男も瑠璃を認めるかな? だって、ねぇ。19話で自分が言ってたことをそのまま透子(=瑠璃)が言ってるんですよっ! 完全にとまではいかなくても、「ひょっとしたら?」くらいは思わなきゃっ!

でないと…。瑠璃が近江に戻っちゃったら、鷹男との接点は全く無くなっちゃいますよっ! それ位ならまだ守弥のほうが可能性ありそう。もともと守弥が宮廷に出仕したのは出世を願ってじゃなく、瑠璃の死を調べたかったからだし。
弓削のことさえ片がついたら、宮廷勤めに未練はないだろうし。瑠璃が求婚に頷いてくれたら、近江にでも何処にでも行くでしょうね♡ 高彬のことは吹っ切ってるし、妹は結婚して幸福になっているのだから、都に執着はしないだろうし。
右大臣家の有能な家司だった守弥なら、近江の受領もこなせるんじゃないかな?(イカン、この流れでは鷹男×瑠璃ではなく、守弥×瑠璃になってしまうっ!)

んで、前回瑠璃が言ってた「やられた分やり返したい」件ですが。鷹男じゃなくても、藤宮様と融君で十分だと思いますよ。
以下、恒例(?)の妄想文でございます。相変わらず、高彬にキビシーです(^_^;)

蟄居が明けて出仕した高彬だったが、公衆の面前で帝直々に蟄居を言い渡された身では、以前と同じである筈もなく。
「フッ…。嘗ての出世頭が惨めなものですのう」
「いや、全く。まさか、主上が皆の前であの様なことを仰るとは。一体何をなさったのやら」
「右大臣家の末子で主上のお気に入りということに、胡坐を掻いておられたのでは?」
「そうですな。御父上は隠居同然というのに。いつまでも過去の栄光にしがみついて、みっともない」
「主上のお気に入りという座も、親友であられた弾正尹殿がとっくにその位置におられましょう」
「親友? そのような関係は『例の件』で解消していますよ」
「そもそも今の地位でいられるのも、姉君であられる承香殿様が東宮のご生母であられるからでしょう。そんなことすら、判っておいででないとは」
「いやいや、その位鈍感であればいっそ幸せというものでしょう。兄君達といい、右大臣殿のご子息方はどなたも頭に花を咲かせておいでのようだ」
「ここだけの話ですが(と言って、声を潜め)、藤壺様が生きておられれば…」
「何か?」
「いえ、主上の藤壺様への寵愛、というよりあれはもう溺愛・盲愛ですな。もし、藤壺様とのあいだに皇子が生まれておられたなら」
「っ! あぁ、成程…。東宮様とて、その座にいられたかどうかですな」
「その通りですよ。言っては何ですが、承香殿様と東宮様のご後見があの方々では…。主上とて、考えられたやもしれませんなぁ」
「確かに…。藤壺様は主上の寵愛に驕らず、気さくな方でしたからなぁ。御父上であられる内大臣殿も、私欲の少ない方でしたし」
「内大臣殿は既に隠居されておられるが。ご子息はメキメキと頭角を表され、今や主上の片腕ともいうべき弾正尹殿であられる」
「主上の叔母君であられる、大尼君様ともお親しいし」
「東宮様の後見人としては、申し分ないというもの」
「そうなったら、女御様と宮様はともかく。右大臣家の方々は…」
「シッ! それは、『言わぬが華』ですよ」
などという、公達たちの嫌みや当てこすりがここぞとばかりに聞こえよがしに囁かれ。身の置き所もなく、いたたまれずに退出しようとすると。
融:「高彬っ」
高:「融っ!?」
融:「あぁ、良かった。探してたんだ」
高:「…、僕をかい?」
融:「うん。ちょっと来てくれ」
高:「悪いけど…。今はちょっと」
融:「(声を大きめにして)大尼君様の御呼びでもかい?」
高:「っ! …、判った。行くよ」
そして、藤宮様の局に向かう二人。
高:「融…」
融:「何?」
高:「大尼君様の御用って、何だい?」
融:「さあね。それは直接お訊きしなよ。僕はお前を呼んで来いと言い遣わされただけだからね」
藤宮様の局に着いた二人。入室の許可を得て入ると、そこは既に人払いがなされ、屏風を立て掛けた御簾の向こうに藤宮様と、向かって左側に秋篠様が控えている。
高:「(秋篠様がいることに驚く)」
藤:「さぁ、お二人ともお入りなさい。融様はそちらに(と言って秋篠様の向かい側を示す)」
(高彬は藤宮様の正面で平伏。そのまま暫く沈黙が続く)
高:「………(藤宮様からのお許しがないので、平伏したまま)」
藤:「(フゥッとため息をつき)中納言、おもてを」
高:「(許しが出て、漸く顔をあげる)」
藤:「中納言。此度、何故呼ばれたかは?」
高:「え? いえ…。と、弾正尹殿からは、大尼君様から直接訊くようにと」
藤:「ご自分で、思い当たることはないと?」
高:「はい…」
藤:「だ、そうですわよ。融様」
融:「やれやれ…。ここまで、愚かになっていたとはね」
高:「………」
藤:「判らないのなら、教えてさしあげましょう」
すると。屏風の影から、頬が腫れて手首に青痣が残ったままの透子(=瑠璃)が現れ、さすがに高彬も事態を察する。
高:「(なっ! ど、どうして、あの女房が此処にっ? 大尼君様と知り合いだったのかっ!?)」
藤:「(狼狽える高彬を見て)不思議そうですわね、中納言」
高:「はっ。い、いえ…」
藤:「この者は、主上から頼まれたのです。『愚かな公達に無体な真似をされた。暫く貴女つきにしてほしい』と」
高:「…。そ、そうですか」
藤:「彼女がどのような目に遭ったのかは、この姿が雄弁に語っております。『誰』がしたのかは…、まさか判らぬとは仰らないでしょうね、中納言?」
高:「っ! …」
藤:「こんな乱暴狼藉をされて…。さぞ怯えているかと思ったのですが。どうしたいかと尋ねたら、『やられた分やり返したい』とのこと」
高:「は?」
藤:「故に、貴方を呼んだのですよ、中納言。これから彼女に何をされようと、手出しは許しません。秋篠様、もし中納言が抵抗するならば、彼を抑えなさい。逆らうようなら、骨の1・2本、へし折っても構いません!」
秋:「はっ(と言って、高彬の背後にまわる)」
融:「(冷めた目で)自業自得だよ、高彬」
高:「(どうしてだ? たかが、女房じゃないかっ! 何故、こんな…)」
瑠:「(高彬の正面に立って、手を振り上げ)このバカ彬っ!(と罵りながら、平手で高彬の頬をぶつ) このっ、バカ彬っ、バカ彬っ、バカ彬ぁっ!!(叫びながら、何度も平手打ちをする)」
藤・融・秋:「「「(3人共、瑠璃の『バカ彬』を聞いて、クスクスと忍び笑いをする)」」」
瑠:「(何度も往復ビンタを繰り返し、肩で息をしながら)あんた…、どうしちゃったのよ。こんなヤツじゃなかったでしょ? 立場の弱い相手に対して身分を笠に着て脅したり、ましてや女に暴力を振るうような男じゃなかった…」
高:「(唇が切れ、口元から血を流しながら)…、知ったふうな口をきくじゃないか」
瑠:「(藤宮様の様子を伺い、頷くのを見て)あんた、判ってる? あんたのしたことは、あんた自身を貶めたんだってこと。『僕にしときなよ』って、吉野であんたから言われた時。ホントに、本当に嬉しかった。
悪評怪評渦巻くあたしに、吉野までわざわざ逢いに来て、言ってくれたあの言葉。あたしには、大切な宝物だったのに…。なのに、あんたは…。あんた自身が汚しちゃった。あんたが土足で踏みにじったのよっ!!」
高:「っ! ま、まさか…?」
瑠:「…。あんたはもう、あたしの知ってる高彬じゃない。あたしの幼馴染の高彬は…。クズで泣き虫でのろまっ子だったけど、人としての道理は弁えてたわ。誠実で優しい人だった。でも、今のあんたは違う。
逆らう相手には汚い手でも平気で使う、恥知らずな卑劣漢よ、右近中納言様」
融:「誠実ねぇ…。妻は姉さん一人と言っておきながら、他の姫に通うヤツが誠実なのかな?」
瑠:「大尼君様、ありがとうございました」
藤:「もう、よろしいの?」
瑠:「はい。言いたいことは、言いましたから。後は、本人の問題です」
藤:「そうですわね。言われたことをどう受け止めるかは、本人次第というもの。これで変わらなければ、それまでです」
融:「(瑠璃の手をとって)あぁ…。赤く腫れあがってるじゃないか。どうせぶつなら、扇でも使えば良かったのに」
瑠:「冗談じゃないわ。勿体ないじゃない」
秋:「何とまぁ…」
藤:「あらっ、さすがですわね」
融:「ククッ、確かに。高彬、聞いたかい? お前は扇一本にも劣るんだってさ」
高:「と、融…。彼女はいったい…」
藤:「中納言、用は済みました。お下がりなさい」
高:「(色々言いたいことはあるが、藤宮様に一喝されて渋々出ていく)」
瑠:「藤宮様、秋篠様、それに融。改めてありがとうございます」
藤:「いえ、よろしいのよ、瑠璃姫。わたくしも多少は溜飲が下がりましたもの」
融:「そうだよ、姉さん。姉さんがされたことに比べれば、この程度で済ませてやるんだ。寧ろ感謝してほしいね」
秋:「しかし…。先程の会話で透子様が藤壺様だと気付かれたのでは?」
融:「かもしれませんが。でも、吹聴する程バカでもないでしょう。そんなことを言い立てれば、自分の頭を疑われますよ」
藤:「融様の仰る通りですわ。中納言も、そこまで愚かではないでしょう。瑠璃姫、貴女ももうお下がりなさい。ゆっくりお休みになって」
瑠:「はい…。では、お言葉に甘えて失礼させて頂きます」
瑠璃が下がった後。
藤:「少し、手緩い気もしますわね」
融:「そうでもないと、思いますよ。アイツの両頬には、姉さんの手形がクッキリとついてますからね。ここに来る時に『大尼君様のお召し』だと、周りに聞こえるように言っておきましたし。その後であんな顔を晒したなら、噂好きの公達の格好の的ですよ」
藤:「フフッ…。その噂話の火種に、融様が風を送るのでは?」
融:「さぁ…?(と言って、ニヤリと嗤う)」
秋:「(相変わらずの黒い二人に、冷や汗を流す)」

えー。雪様が八十二話のリコメで「後でしっかり、他のところから罰が下るかも」と書かれていたので。こぉんな罰を下してみました。
高彬ファンの方、ごめんなさいm(_ _)m
2018.12.20 23:23 | URL | #- [編集]
蘭 says...""
雪様,お久しぶりです!やっぱり瑠璃ちゃんは娘を一度でいいから会いたいですね!鷹男は瑠璃ちゃんを手離すはできるのかしら。そろそろ鷹男からお話を読みたいですね。この間のチャットを参加出来なくてすみませんでした。メーリークリスマス🎄🎅〜〜
2018.12.19 00:34 | URL | #- [編集]

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