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沫雪の唄

「なんて素敵にジャパネスク」二次小説

「長恨歌」第八十五話 今上帝掌侍・透子(瑠璃)

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「その傷が癒えたら会ってもよい」

「え?」

あの話の後、
どうして許してくれる気になったのか、鷹男は姫宮に会うことを許してくれた。

「ただし、母などとは言わぬよう。何も知らぬ姫宮が混乱する」

「…いいの?…ですか?」

「まだそなたを女御だと信じたわけではない。だが…姫宮を害する人間ではないことだけは…信じてもいい。」

「!ありがとうっ…ございますっっ」

やっと姫宮に会える!

やっと、やっと…!!

「傷が癒えたら私の女官として姫宮に会える手筈を取る。少しは話せるはずだ。」










「長恨歌」第八十五話 今上帝掌侍・透子(瑠璃)










腫れていた頬は三日ほどでひいたけど、黒く変色していた手首が元の色を取り戻すには七日を要した。その七日間、鷹男に会えることはなかったけれど定期的に塗り薬が送られてきて誰からとは聞かなかったけれど鷹男の優しさだと信じた。

やがて傷跡が目立たなくなった頃、あたしは左大弁家の女房ではなく帝の傍付きの、勾当内侍様の下、掌侍という立場になった。これならば鷹男の帝に会うこともたやすく、また守りやすいのだと説明を受けた。帝の伝言などを伝えるために姫宮に会うためにも、内裏での地位は必要だったのだ。

「帝の威光を存分に使いましたわね」

藤宮様は満足そうに微笑んでいた。

「また何かあれば知らせくださいませ。すぐに戻ってきますからね。」

そう何度も念を押しながら、藤宮様は一旦退出し、後宮を退出し尼寺へ帰っていかれた。
あたしの傍には小萩が退出したことで戻ってきた勾当内侍様がついてくださり、突然掌侍になり右も左もわからないあたしを手伝ってくれる。

「仕事があるのはありがたいです。待っているだけは苦手で。」

姫宮に会えるまでの時間、なるべく命婦や女孺らに会わなくてすむようにあたしが与えられた仕事は事務仕事がほとんどではあったけれど掌侍として化粧で腫れを隠しながら掌侍の仕事をこなした。

「……わたくしなどに敬語など不要でございます。“様”などつけることもおやめください。あまりに恐れ多いことでございます。」

「勾当内侍様?」

戻ってきた勾当内侍様の変化に首をかしげれば
あっと思う間もなく平伏され驚いた。

「勾当内侍様?!ど、どうしたんですか?!何が…っ」

「…藤壺女御様……っっお戻りを、お待ちしておりました………!心、より…っ」

「……え?」

「もうお隠しにならないでください。わたくしも、遅まきながらあなた様が藤壺女御様であることを知りました。知らぬこととはいえ、これまでの無礼、どうかお許しください。藤壺女御様……おかえりなさいませ」

「どうして……」

勾当内侍様には何も言っていない。言うつもりもなかったし、それらしいことなんて何も…。
あたしの困惑を知ってか知らずか、
勾当内侍様は続ける。

「透子殿が参内するにあたり、弾正尹様から何に代えても守れと言われておりました。その理由は自分で見つけるようにとも。初めから二の姫様よりもあなた様が気になっておりましたがまさか女御様とは思わず。見当違いな推測もいたしましたがようやくわかりました。透子殿…あなた様は藤壺女御様だったのですね…っ」

「融が…?」

「はい。先日、とうとうわたくしにも教えてくださいました。お姿が変わられている理由も、何もかも。」

「そう…だったの……」

あたしの知らないところで融も動いてくれていたようだ。
どうして勾当内侍様に話したのか、融にはそうする理由があったのだろうか。

「御身、必ずお守りいたします。二度と危険にはさらしませぬ。この勾当内侍をお信じくださいませ」

「危険ってそんな……あたしを殺した犯人が、今もあたしを狙っているということ?」

顔をあげた勾当内侍様は神妙に頷いた。
不安と恐怖が過ぎる。

「今は高野山に行かれている弾正尹様より申しつかりました。女御様に全てをお話するようにと。藤壺女御様を殺した犯人は……弓削是雄という男は、藤壺女御様に横恋慕していたのでございます。恋した女御様を己の手に入れんがため、禁術を使い魂だけを抜き取ろうとしたものの術は失敗、女御様はお亡くなりになってしまわれました。代わりに女御様は近江で転生を果たされ、受領の姫となりお姿を変えた。記憶はあるとお聞きしました。」

「ええ…」

「弓削是雄の行方はまだ掴めておりません。しかし弓削是雄が女御様の生まれ変わりを探している証拠は見つかっております。弓削是雄の死亡が確認されていない以上、今尚生きていて女御様を狙っていると考えていいでしょう。ですから、女御様、どうかお気をつけください。そして…わたくしはこの命に代えても藤壺女御様をお守りいたします!」

「ちょっと待って…いっぺんに言われすぎて…どうしたらいいか……」

あたしに横恋慕?
好きだったから殺されたというの?
たった三度程度の邂逅で?でも好きがどうして殺すことになるのかわからない。
手に入れるため?あたしが女御だったから?女御のままでは手に入れれなかったから?

そんな、

そんなことって……

「悪夢だわ…」

「女御様…」

だってそんな
そんなのってまるで。

まるであの事件の再現みたいじゃない。

偽りの真相の、あの事件の。

鷹男には全てを打ち明けていたけれどだからって傷つかなかったわけじゃない。
なのに、なのに


あの事件をなぞるようにしてあたしは殺されたというの―――?


「鷹男が心を閉ざしてしまうのも当然だわ……」

なんていう惨いことなのか。
なんていう酷い。

どこまであの人を傷つけるの…っ!

「許せない…」

許せないわ、その男。

「女御様?」

絶対に許さない。
あたしを好きだからなんだっていうのよ。
そんなので同情なんてしない。
身勝手すぎる理由であたしは殺され多くの人達が傷ついた。

「あたしの膳に薬を盛った女や知りつつ黙っていた女達は?」

「…実行犯の女は共犯だった可能性が。女御様のお身体と自分の身体を取替え寵妃に成り代わろうとしていたのではないかということです。黙していた女達は…弓削是雄に恋するあまり庇っていたのでしょう。」

「そう……そんな、勝手なことを、ね………身体を乗っ取ったからって成り代われるはずがないじゃない。鷹男は、帝はあたしの姿形を愛してくれてたわけじゃないのよっ」

身勝手な恋情であたしは殺され、未来を奪われた。
愛した人を支えたいという願いも、共に生きる幸せも、初めての子を産む幸せや子が健やかに育っていく過程を見守る幸運も。
何もかも奪われ、殺された。

絶対に仕返ししてやる。

絶対絶対許さないわ!

やられた分はきっちりやり返してやるんだから待ってなさい弓削是雄!!

「あたしはやられっぱなしで黙っているような大人しい女じゃないわよ!この瑠璃に手を出したこと………心の底から後悔させてやるわ!!!」





続く


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雪 says..."ふにゃろば様"
そうなんです!!
瑠璃の肩書きが徐々にランクアップしていってるところに目をつけてもらえると嬉しいですwww
仕返し方法がね~
あんまりいいのが思いつかないんですよね~
ってふにゃろば様のコメントを改めて読み返しててひとつ思い浮かんだのでそれでいこうかなとちょっと思いましたので忘れないようにしないと…。
2019.01.29 23:50 | URL | #- [編集]
雪 says..."ふにゃろば様"
遅くなりましたが昨年はありがとうございました!今年もよろしくお願いしますね(*^_^*)

すっかり更新が止まりつつありますが…
創作の神様が戻ってきてくださることを祈ってどうか待ってくださいませ…
本当に今、スランプで。。
かけなくて…
無理に書いても止まるし全然面白くないし…PCすらあまり開かない毎日です…
2019.01.29 23:47 | URL | #- [編集]
ふにゃろば says..."エ〜ン…(T_T)"
雪様、こんばんは。
そして、ハニー様。年末の御挨拶でのお言葉、ありがとうございますm(_ _)m

新年早々、またもやらかしてしまいました…。煌姫の台詞の中で、「『徹』様」というものがありますが、正しくは「『融』様」です。度々のお目汚し、どーか御容赦をっっ💦
2019.01.06 23:02 | URL | #- [編集]
ふにゃろば says..."明けまして、おめでとうございます(^ ^)"
雪様。明けまして、おめでとうございます。今年もお話、楽しみにしていますっ!(←新年早々、プレッシャーを掛けるなっ)

今回のタイトルが「今上帝~」となっていたので、一瞬「おぉっ、やっと鷹男の一人称!?」と思ったのですが。透子(=瑠璃)のことだったのですね。それにしても。瑠璃の肩書って色々変わってますよね。
「近江守娘」→「左大弁家二の姫付女房」→「今上帝掌侍」ですもの。最終的には、「藤壺女御」になりますよね、雪様!?

さて、瑠璃は漸く弓削の動機を知りましたが。自分自身が殺された事より、それによって周りの人達が傷ついた事に対してより怒りを感じているようですね(まぁ、瑠璃らしいですが)。
弓削の動機は、表面上は吉野君と同じですね(言われてみて、「あぁ、そうか!」と私も思いました)。最も、成り立ちや深さは全く違いますから、瑠璃が「絶対許さない」というのは当然ですが。
問題は「仕返し」の方法ですよね。「やられた分、やり返す(←高彬の時も言ってたな…)」と息巻いていますが、どーしたら「やり返した」ことになるのかな?
瑠璃の性格から言って、弓削を処刑することで納めるとは思えないし。「魂の交換」や「輪廻転生」なんて、瑠璃には(というか、一般人には)無理だし。
何をしたら、弓削に一矢報いたことになるのか。今からワクワクです(ˆ◡ˆ)。

そしてそして。融君は今、高野山に行ってるのですね。以下は、76話で融君が「高野山の調査」を言い出した時に思いついた妄想文です。興味のない方はスルーして下さいませm(_ _)m

宴を隠れ蓑にした秘密会議で、高野山への調査が決まった融君は、その日煌姫の屋敷に戻り。
煌:「お帰りなさいませ、殿」
融:「あぁ、ただいま」
煌:「…。何か、ありましたの?」
融:「…。どうしてだい?」
煌:「いつもと様子がちがうようですから」
融:「さすがに、敏いね。実は、高野山に行くことになった」
煌:「…、瑠璃姫に関してですのね」
融:「っ! フッ。全く、貴女には敵わないな。あぁ、その通りだよ。姉さんを殺したヤツが、高野山に行ったかもしれないからね」
煌:「徹様、もっと詳しくお教え下さいませっ」
融:「…、判った。貴女も僕らの仲間だからね(と言って、瑠璃暗殺の黒幕が弓削是雄で、その動機等の現時点で判明していることを煌姫に話す)」
煌:「そうですの…。それで、融様が調査に」
融:「うん。この事は内密だからね。理由は公にできない。その点僕は弟だから。都も平穏だし、姉さんの墓参りに行っても不自然じゃないだろ?」
煌:「…、殿。その調査、あたくしにも手伝わせて下さいませ」
融:「煌姫っ!?」
煌:「その男、自分の容姿を武器に女人を誑かして味方にしていたのでしょう? ならば、高野山でも同様のことをしている可能性は大きいですわ」
融:「確かに、そうだが。でもその点は、僕や部下達が調べるよ」
煌:「…、恋に狂った女を甘く見てはいけません。その弓削とやらが女達に口止めをしたのならば、融様達が厳しく追及しても口を割る可能性は低いですわよ。実際その男のことが明らかになったのは、瑠璃姫が殺されてから18年も経ってからでしたし」
融:「そ、それはそうかも知れないけど…。それを言うなら、貴女だって」
煌:「女の立場から申し上げれば、殿方が怖い顔で聞き取りをしても、委縮するばかりで口を閉ざすだけです。その点、女同士の世間話ならば、舌も滑らかになりますわ」
融:「せ、世間話?」
煌:「そうですわ。都から来た役人や貴族に居丈高に尋問されるよりは、何気無い噂話のほうがずっと色々なことが聞けましてよ」
融:「………」
煌:「その点の手腕は、あたくしに任せて下さいませ。きっと、お役に立ってみせますわっ!」
融:「…、判ったよ。貴女のことだ。駄目だと言ったら、一人ででも出掛けかねないからね。それくらいなら、僕と一緒にいるほうがまだ安心だ」
煌:「っ! では、融様っ」
融:「あぁ、貴女にも来てもらおう。考えてみれば、そのほうが、都合がいいかも知れない。『姉の墓参りと言うのは口実で、実は妻との旅行』とすれば、より世間の目を誤魔化し易いし」
煌:「ありがとうございますっ」
融:「でも! まず、自分の身の安全を第一にすること。これが絶対条件だ、いいね!?」
煌:「ええ、勿論ですわ。あたくしだって、まだまだ死にたくはありませんもの」

と、いうことで。家屋敷や子供達は使用人や乳母に任せて、二人は高野山へ。そこで互いに調査をするうちに。

融:「煌姫っ! 怪しい男が見つかったってっ!?」
煌:「融様。残念ですが、弓削ではありませんでした」
融:「何故、そう言い切れるっ!? 美男だそうじゃないか! 今すぐっ」
煌:「落ち着いて下さいませ、殿。その男なら、こちらに」
融:「!? つ、連れて来ているのか!?」
煌:「はい。(男に向かって)おいでなさい」
融:「(出てきた男の顔に手をかけ)ふ、ん。確かになかなかの顔立ちをしているな」
煌:「殿。この男は康緒と申します。妻は綾と言って、夫婦ともに瑠璃姫の世話になった者です」
融:「煌姫は…、この男を知っているのか?」
煌:「ええ。よぉく、存知ておりますわ。瑠璃姫がこの者と関わった時、あたくしも身近にいましたもの」
融:「では…、弓削ではないのか…」
煌:「融様、そんなに気落ちなさることはありません。弓削の探索、この者にもお命じなさいませ」
融:「煌姫っ!?」
煌:「殿のような殿上人は、宮中でのお役目があります。その暇を割いてとなると、限られた時間しか動けませんでしょう? でもこの者なら、調査に専念させることができますわ。その間、家族はこちらで面倒をみてやれば良いのです。(小声で)いざとなれば、人質にもなりますし」
融:「(同じく、小声で)駄目だよ…。この事は、宮中でも主上の信頼厚い限られた臣下しか知らされていないんだ。それをこんな、どこの馬の骨とも判らない地下人に」
煌:「ならば、主上に御伺いをお立てなさいませ。主上はきっと『否』とは仰りませんわ」
融:「………。どうやら、この男には何か秘密がありそうだね」
煌:「さあ…? それは、融様がご自分で確かめて下さいませ」
結局、煌姫に言われた通り鷹男に文を出してみると、「その者を都に連れて来るように」との密命が届き。命令通りその男を都まで連れて行くと、鷹男直々にその男と語り合い(そこで、融は初めて「康緒」が何者かを知る)
弓削捜索に(腹黒で)有能な人物が一人、加わったのでした♡

ソッチーが綾姫と一緒に無事に逃げた後、東宮様とも再会して親子仲良く暮らせていたとしたら、という仮定で妄想してみました♪
もしそうなっていたとしたら、綾姫は無論ですが、ソッチーも瑠璃に少しくらいは感謝しているだろうし、高野山への墓参りもたまにはしているんじゃないかな?、と思いまして。
その偶々の墓参りの時に、調査に来た融君と煌姫一行と出くわし。煌姫に気おされて、あれよあれよという内に手伝う羽目に相成った、というのも面白いかなぁ~と♡(それにしては、ソッチーの台詞が一言も無いなぁ…)
2019.01.02 21:32 | URL | #- [編集]
ハニー says..."今年もお世話になりました"
以前のチャット会ですでに書き上がっていると仰っていた85話がついにアップとなりましたね。
鷹男の態度の軟化も嬉しいですが、最後に透子が台詞の中で自身を「瑠璃」とついに名乗ったのが、めっちゃ嬉しかったです!

今年もたくさんの素敵なお話をありがとうございました。本当に毎日毎日、更新を楽しみにしてきました。
途中からふにゃろば様のサイドストーリーまで拝見できるようになり、他の皆様ともコメント欄を通じて一緒に盛り上がれたことで、お話とコメント欄と両方で本当に楽しませて頂いたこと、すごく感謝しています。

来年もどうぞ宜しくお願いいたします。
2018.12.31 00:42 | URL | #- [編集]
says..."管理人のみ閲覧できます"
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018.12.30 08:06 | | # [編集]

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